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「建築構造士」その資格と位置付け

 

わが国の資格には
三種類ある!

わが国で資格と呼ばれるものには、大別して以下の三種類があります。
・国家資格: 法律に基づく資格で、一般的には業務独占ないしは名称独占を伴います。 業務独占を伴う国家資格の場合、その資格を持つ者のみが一定の業務を行う事ができます。 よく知られた例として医者や弁護士が挙げられ、 建築関係の資格である一級建築士、二級建築士、木造建築士もこれにあたります。 一方、名称独占を伴う国家資格の場合は、その資格を持つ者だけがその資格名称を名乗る事が出来ます。 この例としては技術士が有名です。 業務独占は伴わないものの、法律で決められた名称を使うことで、その分野の業務を行う場合に、 一般的には社会から信用されているようです。
・公的資格: 国の認可を受けた民間資格です。 民間の団体が審査を行い、その審査に合格した事を証明する、 いわゆる審査証明事業を国(所管省庁の部局等)が認可する事により、 一種のお墨付きを与えている形になっています。建築関係の例としては、 インテリアプランナーやAPECエンジニアなどが挙げられます。 最近の規制緩和の潮流から、これらの審査証明事業は縮小・廃止の方向にあるようですが、 外国との取り決めに基づく国際資格のAPECエンジニアは残ると考える人が多いようです。 廃止となった公的資格は民間資格に移行するものが多いと予想されています。
・民間資格: 民間団体の任意・独自資格です。 建築関係の資格で、JSCAの認定する 建築構造士 や、東京、大阪、静岡、 栃木の建築士会で試行を開始した専攻建築士はこの部類に属します。 法律やお墨付きによる裏づけが無いため、 認定機関の信用度と資格保持者の質が社会からの評価を決める事になります。

建築士資格は建築物の設計および工事監理に関する業務独占を伴う国家資格

建築士法第1条では、「建築物の設計、工事監理等を行う技術者の資格を定めて、その業務の適正をはかり、 もって建築物の質の向上に寄与させることを目的とする」とし、第3条で規模や構造種別ごとに「一級建築士」「一級建築士又は二級建築士」「一級建築士、二級建築士又は木造建築士」でなければできない設計又は工事監理を定義しています。ごく大雑把には、「一級建築士は全ての規模、構造種別」「二級建築士は構造種別ごとに定められた一定の規模以下」「木造建築士は木造」の建築物の設計、工事監理を行う場合に必要な資格という事ができます。建築士でなければできない業務を定めている事から業務独占を伴う資格であり、法で定めている事から国家資格です。 この業務独占を伴う国家資格である建築士資格には、特定の専門分野は規定されておらず、
建築設計、構造設計、設備設計などを含むすべての分野の設計および工事監理を行う事ができる資格となっています。 この事が、専門分野明示の議論に繋がることになります。

表 建築士の業務範囲

構造 木造その他右欄以外の構造 鉄筋コンクリート造、鉄骨造、
石造、煉瓦造、コンクリートブ
ロック造、無筋コンクリート造
高さ・階数 高さ13mかつ
軒高9m以下
高さ13m
又は
軒高9mを
超えるもの
高さ13mかつ
軒高9m以下
高さ13m
又は
軒高9mを
超えるもの
階数1 階数2 階数3 階数2
以下
階数3
以下
述べ床
面積
(㎡)
~30
100
300
500
1000 ◎※ ◎※ ◎※
1000~ ◎※
凡例 ●:一級建築士
◎:一級建築士又は二級建築士
○:一級建築士、二級建築士、木造に限り木造建築士
△:だれでもよい
※用途により、学校、病院、劇場、映画館、観覧場、集会場(オーディトリアムを有しないものを除く) 又は百貨店は、一級建築士でなければ設計、工事監理を行うことは出来ない。


欧米の資格制度

業務独占を伴う資格を定めている場合や名称独占を定めている場合など、国によって違いがありますが、建築設計、構造設計、設備設計など、専門分野別に資格を定めているのが一般的です。なお英語では、建築設計者(家)をアーキテクト、構造設計者(家)や設備設計者(家)をエンジニアと総称しています。

建築士資格を取り巻く状況

規制緩和の流れを受けた各種資格の民間開放、消費者保護の観点からの情報開示(役割の明確化)などの動きが国内の状況だとすれば、専門家サービスの流動化を促すWTO(世界貿易機関)の動き、APEC(アジア太平洋経済協力会議)諸国が参加した国際資格であるAPECエンジニア(2001年から登録開始)やAPECアーキテクト(2005年登録開始を目指す)の創設などが国際的な状況です。
個々の専門分野に片寄らない建築士資格は、建物の設計から施工、監理まで一貫して大工の棟梁が請け負っていた日本の伝統に根ざした良い制度だと考える人も多いのですが、個建て住宅の瑕疵問題などに起因した消費者保護の観点からの情報開示や役割の明確化を求める動きがあるのも事実で、役割即ち専門分野を明確に示す事が社会の要求事項になりつつあると考える人も増えてきています。また、国際資格の場合には欧米の資格制度がベースとなるため、必然的に専門分野別の資格制度になります。

JSCAの認定する建築構造士は構造設計の専門家

阪神・淡路大震災で比較的良好な耐震性能を示した事で「新耐震設計法」が有名になりました。新耐震設計法は1981年に施行されましたが、JSCAの前身である「構造家懇談会」も同じ年に設立されました。新耐震設計法はそれまでの設計法に比べて高度で複雑な設計を要求するものでしたから、その成立過程の一端に加わり、かつ新耐震設計法に則して設計してゆく事になる構造設計の専門技術者が集まり、自己研鑽、情報交換、社会への専門性明示、アピールなどを行うために会を設立したという一面があります。特に社会への専門性(職分)明示、アピールは重要な課題だと捉え、そのためには構造設計および監理に携わるものの専門資格を創設すべきだと考えていました。その専門資格が有効に機能するためには国家資格または公的資格にすべきだとの認識で活動して来ましたが、建築士の業務独占の一角を崩す事に繋がるとの危惧も有ってか、法制化や認可は継続審査状態のまま現在にいたっています。
「構造家懇談会」は1989年に「(社)日本建築構造技術者協会」へと発展的改組をしましたが、専門資格はやはり必要で、国家資格または公的資格とする事が無理なら、民間資格でもやむを得ないとの判断に至り、「建築構造士」自主認定制度を1993年度から開始しました。
民間資格とはいえ、建築士制度との整合を図る意味から、建築構造士資格の要件として、
①一級建築士登録後4年以上の構造設計および監理の経験
②2年以上の責任ある立場での構造設計および監理の経験
③書類審査、筆記試験および面接試験の合格
など規定しています。この事から、建築構造士は一級建築士をベースにした上乗せ専門資格であり、JSCAの責任において社会に推薦しうる構造設計の専門家だと考えています。2004年4月現在2547名がその資格を維持しています。

国際資格APECエンジニア

日本、カナダ、香港、オーストラリア、米国など10カ国・エコノミーが参加し、11のエンジニア資格に関して要件を定め、各国において登録された者がAPECエンジニアです。国際的に統一された要件を定めて登録しているので国際資格ですが、他国でその資格により業務を行うためには、別途2国間協定が必要とされています。今のところ、日本は2001年以降Structural(建築構造)とCivil(土木構造)の2分野のみ登録を行っていますが、2国間協定を結ぶには至っていません。Structuralの分野での登録要件は10年以上先行していたJ SCAの建築構造士資格の要件を参考に決められた一面があり、概ね建築構造士と同じになっていますが、①英語での申請書類が必要、②筆記試験なし、③面接試験は必要だと判断される場合のみ実施 の3点が大きく異なっています。Structuralの分野での日本における登録者数は2003年6月現在629名です。

建築士の専門分野明示を目的とした専攻建築士制度

「建築士は、建築士業務の専門分化という時代の現実を真摯に受け止めるならば、少なくとも自らの責任を果たす専門業務領域とその能力を消費者に明示する責任がある」(平成15年 東京建築士会専攻建築士制度 審査・登録申請案内書より抜粋)との理念から、建築士の専攻領域を実務経験年数などに基づき認定登録する制度です。日本建築士会連合会での決議のもと、2003年から東京・大阪・静岡・栃木の建築士会が試行的に登録を開始しました。2004年4月現在、構造分野の登録者総数は4都府県合計で170人となっており、2005年から本格的に全国で登録開始される予定になっています。 この制度は、JSCAが1993年以来維持してきた建築構造士制度と基本的には同じ理念に基づくものであり、建築士会連合会とJSCAの間で2003年4月28日に 「専攻建築士制度に関わる2団体基本合意書」 を締結し、その旨確認するとともに、建築構造士が構造専攻建築士の上位資格であることを確認しています。 この協定に基づき、要請のあった東京建築士会に協力して構造専攻建築士の事前審査を行っています。また、構造専攻建築士の建築構造士へ資格取得への道筋をつくるなど、協力体制をさらに整えていきたいと思っています。

図 平成15年の一級建築士試験(設計製図)合格者の職務内容別割合 ※1
(登録者数名4477)
図 専攻建築士の専門分野割合 ※2
(H16.3.22:登録者数1931名)
※1 (財)建築技術教育普及センター:
一級建築士試験データより
※2 (社)日本建築士会連合会:
専攻建築士認定・登録結果報告
(4建築士会)より



企画・編集:資格問題WG・広報委員会HP部会
原案執筆:福島正隆(資格問題WG)

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