JSCA会誌「structure」
主集 構造設計はどう変わったか -震災から10年-

 

主集要旨

耐震設計手法は経験工学と言われ、解析技術や分析技術の高度化を糧に、地震被害の教訓をその都度手法に反映させて発展してきた経緯がある。1995年1月17日未明に発生した兵庫県南部地震は近代的都市に甚大な被害を生じさせ、10年を経た今日でも都市に深い爪痕を残している。同時に、建築構造設計に携わる私達にも多くの教訓を残した。

当協会では、震災直後から建物や都市の安全性について連続4回の公開パネルディスカッションを開催し、1996年1月、その成果を六つの提言として発信すると同時に、問題解決に向けて7課題のアクションプログラムも付した。1997年4月、「地震のたびに高い授業料を払うのはもうよそう」(当時の村田義男会長)と題し、アクションプログラムの総括報告を行った。以降の協会活動は、このプログラムの実用化に向けて行われ、その成果はJSCA基準等に集大成され今日に至っている。

我々が得た大きな教訓の一つに、社会とのコミュニケーション不足によって生じた「安全性に係る認識のギャップ」が挙げられる。耐震性能レベルは構造設計者が一人で決めるものではなく、社会との会話を通じて、社会が認知するレベルで実現することの重要性を兵庫県南部地震は教えてくれた。この教訓は、性能設計体系への移行と共に重みを増しつつある。

おりしも発生した新潟県中越地震は改めて自然の脅威を我々に知らしめ、また、東海、東南海、あるいは南海地震などの海洋性巨大地震が予測される時、遅々として進まぬ耐震改修や長周期等の新たな課題も発生している。この様な環境にある今こそ兵庫県南部地震以降の10年を振返り、我々が進むべき方向を再点検することも必要ではなかろうか。本主集では、当協会の各委員会、技術委員会などが、それぞれの立場で震災以降の10年を点検すると共に、新たな技術課題や方向を提起している。本主集が今後の構造設計の在り方を考える契機になれば幸いである。


編集委員
蓮田常雄(編集委員会)
福島順一(編集委員会,RC系部会)
伊藤 優(技術委員会)
仲山雅一(設計法部会)
橋本友希(荷重部会)
池田憲一(耐火設計法部会)
木村 衛(金属系部会:前期担当)
園部隆夫(金属系部会:後期担当)
三町直志(地盤系部会)
安部重孝(耐震診断補強委員会)

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