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構造技術者の賞『JSCA賞』

第16回JSCA賞 作品賞 汐留住友ビル

 
建物南面

汐留住友ビルは、概ね終盤を迎えた一連の汐留地区再開発事業の中で、住友生命・住友不動産の共同開発ビルとして計画された。

構造計画概要

本建物は、地下鉄汐留駅、「ゆりかもめ」汐留駅に接続し、敷地の前面をゆりかもめやJR線が通過する状況を考慮して、低層部に主に夜間利用されるホテル、高層部にオフィスという逆転の発想で構成されている。高層部のオフィスは基準階でネット面積3,600m2の広さを確保するとともに、無柱で最大限の眺望の確保が望まれた。また、低層部には、主動線である地下鉄および「ゆりかもめ」汐留駅側に大きな透明感のあるアトリウムを配置し、アトリウムを半分囲む形で、「つ」の字形のホテル客室を配置すること、すなわち、大きなアトリウムを平面的に偏った位置に配置することが要求された。

このような建築計画的要求に対して、構造計画としては、ホテル・アトリウムの低層階とオフィス階の間に免震層を配置した中間層免震構造を採用し、地震力を低減し、大地震時においても免震部材以外の構造材を弾性状態に保つことで力の流れを明快にし、複雑な建築計画的な要求に応えた。

北エリア配置図/西南側立面図

構造設計概要

中間層免震構造の超高層建物への適用

本建物で採用した中間層免震構造は、一般の中間層免震構造と異なり、高層建物の中間階に免震層を設け、免震層の上部に位置する上部構造は免震構造としての高耐震性能を備えるとともに、地震による建物への入力エネルギーの大半を上部構造の運動エネルギーで蓄え、これを免震層のダンパーで消費する、いわゆるマスダンパー効果により下部構造も地震応答が低減し、高耐震性能を確保することが可能となる構造である。従って、免震層の上部及び下部構造は、絶対的に大きな剛性・耐力が求められるのではなく、積層ゴムに比べて相対的に大きな剛性と概ね弾性挙動をする耐力が確保できれば、効果が期待できる。

高層部オフィス階 平面図
低層部ホテル階 平面図 左・中央:アトリウム内観、右上:事務室、右下:アトリウム外観(夜)

この構造を採用することで、大地震時にも低層部を無理なく弾性設計する ことが可能になり、剛床仮定が成立しない「つ」の字型の平面形状に対して、力の流れを明快にし、地震時挙動を把握しやすくすることができた。また、高層オフィス部分では、大地震時の応答せん断力を一般高層建物の1/2以下とすることが可能となり、12.8m×23mの非常に大きな柱スパンを可能にし、奥行きの深い大きな無柱のオフィス空間と、眺望を最大限に確保したオフィス空間を両立させることができた。

低層部ホテル階梁伏図
高層部事務室階略伏図 短辺方向軸組図 常用エレベーター変形追随システム

中間層免震構造を可能にしたもう一つのシステムに、エレベータのシステムがある。本建物は、前述のように免震層の上下で用途が全く異なり、エレベータも下層部と高層部とそれぞれ専用となっている。そのため、オフィス用のエレベータは3階から14階まで乗降の必要がなく、この間でエレベータを支えるフレームを構造体から独立させ、地震時の免震層の変形を吸収することができた。

大地震時振動のイメージ図

社会的意義

本建物で、提案した中間層免震構造は、近年増えている再開発建物のように、上下層で建物の用途が異なる計画に対して、それぞれの用途に最適な構造計画を採用できる可能性を開いたのではないかと考えている。


透明感あるガラスアトリウム

中間層免震構造により地震力が低減されたことを利用して、アトリウム部分では、オフィスの自重を支える柱に、地震力を負担させない計画とし、1階柱脚をピン接合とすることと相まって、非常にスレンダーな柱として、アトリウムの透明感を際だたせることを可能にした。

アトリウム柱とガラス耐風梁の取合い アトリウム

透明感のあるアトリウムを実現するための工夫として、アトリウムをフロートガラスを構造材として積極的に採用していることが挙げられる。鉛直荷重はステンレスケーブルによって支持され、水平荷重は、面ガラス→リブガラス→フィンボックス→ガラス耐風梁→スチールアーム部材→柱といった経路で伝達する構造となっており、耐風梁も含めてほとんどの構造材をフロートガラスで構成した。

柱中間部
中間層免震の採用により、
コンパクトなガラス支持部の
納まりを実現
柱詳細 柱頭・柱脚部 デッキレベルよりのアトリウム外観

文・資料提供:常木康弘(日建設計)

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