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構造技術者の賞『JSCA賞』

第16回JSCA賞 新人賞 國學院大學120周年記念1号館

 
建物外観
建物正面

建築コンセプト

敷地条件の厳しい都心の大学講義室において、建築・構造・設備を統合した高密度の空間相互利用により、豊かなひろがりを感じさせる空間を創造する。

■渋谷キャンパス再開発第1期計画

國學院大學は平成14年に創立120周年を迎え、4期8年間にわたる渋谷キャンパスの再開発計画に着手した。本建物は2003年3月に再開発1期計画として竣工した講義棟。

構造設計テーマ

合理的かつ必要最小限の構造部材を魅せる。ディテールを工夫し、仕上げを省き、素材の持つ質感を魅せて意匠とする。

■全ての構造を魅せる

上記デザインコンセプトを、構造材のみならず、内外装材などの仕上げ、エレベータや自動ドアなどの装置部材にも適用し、空間意匠の統一を実現した。

講義室

建築・構造・設備を統合した「C型ユニット」の採用により使いやすく開放感のあふれる講義室とする。

大講義室内観 一般講義室内観
C型ユニットの組み合わせにより平面を構成
講義室の構造部材配置
講義室の構造部材配置

■理想的な講義室 ~「C型ユニット」~

限られた敷地条件の中で、大学講義室を合理的に創り出すため、耐震壁をコの字型に配置し、外壁面に壁柱と扁平梁を設け、リブ付ハーフPC床版で床を構成する「C型ユニット」を採用した。本建物はこのC型ユニット4つを組合せ、厚200mm~300mmの場所打ちコンクリートスラブで各ユニットを一体化する構成とした。

■開放感を与える壁柱・扁平梁

C型配置の耐震壁は全地震力を処理し、外壁面は鉛直荷重のみを支持する壁柱と扁平梁で設計できる。これにより広大な開口部を得て、開放感あふれる講義室とした。壁柱と扁平梁が、水平・鉛直ルーバーとして自然光を効果的に取り入れ、格子状の軽快な建物外観を与えている。

■壁配置 ~平面自由度と高耐震性を両立~

外壁面を除き、柱および梁部材はC型に配置した耐震壁と同幅の300mmとして「消す」ことで、柱、梁型が突出しないシンプルで使いやすい講義室平面を実現した。共用空間との境界に配置した耐震壁以外に柱・梁は無く、平面自由度も極めて高い。また十分な壁量により、大地震時にも構造体の被害はほとんど生することは無い。

■PC床版と天井ふところの有効利用

講義室の床面は無梁版で構成し、十分な天井高さを確保した。リブ付ハーフPC床版を採用し、南洋材型枠使用量の低減による環境性、サポート材軽減、工期短縮のメリットを生かしつつ、講義室内にPC床版下面リブを「魅せる」ことで、精巧なリブの繰返しによるリズミカルな天井面意匠材を兼ねる。

リブ間のふところは空調ダクトスペースと照明スペースを交互に配置し、設備計画と整合させている。

ハーフPC床版の断面詳細図

共用空間

エントランスホール

透明感・浮遊感を有する部材およびディテールを用いて限られた面積のエントランスホール、アトリウムを構成し、吹抜け空間に豊かなひろがりをもたせる。

ひとつの部材が複数の機能を「兼ねる」ことで部材数を減らし、あるいは見え掛かりとならないようにディテールを工夫することで部材を「消す」手法を用いる。

■カーテンウォール ~機能を「兼ねる」FB~

フラットバーにより構成されるカーテンウォール

ガラスとスチールフラットバー(FB-150x19)のみのシンプルな部材による構成で、透明感のあるカーテンウォールをローコストで実現させた。

縦材FB材はカーテン ウォール自重支持、耐風材そして自動ドア三方枠を「兼ねる」。横FB材は耐風材であるが、FB自重たわみを止めるため、下部のガラスがFB自重を受け、変形止めとしての構造材を「兼ね」、吊り材などの自重受けを「消す」ことにより透明感を高めている。

縦FB材と横FB材の接合は横FB材を相欠きのうえHTB接合とし、簡素な意匠と建方精度管理の施工性に配慮した。なお、ガラスはフロートガラスを採用し、ガラス自重は縦材と工場溶接された横材端部ブラケットにあたる部分で支持させている。

■鉄骨階段 ~ささら桁を「消す」~

 
アトリウム鉄骨階段 アトリウム鉄骨階段ダンパー配置

浮遊感と緊張感をもたせるため、人が乗る段床以外の部材をできるだけ「消す」ことを意図した。ささら桁は厚50mmの稲妻型とし、 厚80mmボックス断面の段床内側に寄せて配置することで目立たないようにした。 行って来い階段とし、踊場に柱あるいは吊り材は設けていない。

アトリウムシースルーEV
外部RC階段
踊場はささら桁接続部を除いて厚みを段床と同じ80mmとして緊張感を高める効果をもたせている。

歩行時振動性状の向上を図るため、制振ダンパーを設置した。鉛直方向振幅が大きくなる段床部中間レベルと踊場内部に配置して視界から「消す」ため、厚60mmの極薄型ダンパーを開発した。

■エレベータシャフト ~柱梁を「消す」~

シャフトの存在感を無くすため、各階のスラブからフラットバー(FB-180X50)を持ち出し、エレベータレール水平力とシャフトガラス鉛直荷重の支持を「兼ねる」ことで、柱梁を全て「消す」ことに成功した。

■外部RC階段 ~柱梁を「消す」~

建物エレベーションと整合する水平、垂直要素の組合せによって、RC階段に緊張感と浮遊感を持たせた。屋内鉄骨階段のコンセプトを継承し、板要素が規則的に積層する構成。踊場間段床を稲妻型一方向スラブとして重量を軽減し、プレストレスを導入した片持踊場スラブにより構成し、柱梁を「消し」た。また、発生する曲げモーメントに対して引張り応力が生ずることの無いよう、踊場スラブと取り合う壁柱にもプレストレスを導入している。


文・資料提供:山脇克彦(日建設計)
※撮影:SS東京

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