特集『第20回JSCA賞』新人賞

 

株式会社トンボ鉛筆本社ビル

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伊藤 央(いとう ひろし)

建築計画

総合文具メーカー・トンボ鉛筆の新本社ビル

事務所棟1・2階は来客用の会議・応接ゾーン、3~5階は南北に開けた16m×26mのワンルームタイプの執務ゾーン、6階は視線を遮る柱を一切無くした開放的な役員ゾーンで構成。各層は吹抜を持ったコアで繋ぎ、コミュニケーションを誘発する一体空間を構築した。食堂棟に向けて緩やかに昇る緑の丘は、その下に実験室を内包し、優しく来客を迎え入れると共に街に緑のオープンスペースを提供する。外観は、ものづくり企業としての真摯な姿勢を表現すべく、ガラスと金属によるシンプルな美しさを求めた。

コミュニケーションを誘発する吹抜空間「コミュニケーション・コア」

エントランスロビーから最上階までを繋ぐ吹抜には、コーポレートカラーで彩られた耐震壁を中心に、多層にわたる執務フロアを繋ぐ階段、リフレッシュコーナーやそこに連続するコミュニケーションスペース、シャフトレスのエレベーターを配置し、行き交う人の視線や会話が交錯する空間を構築した。コミュニケーションを誘発し、本社としての一体感を醸成する一方で、外部に対しては、企業アイデンティティを表出するフィルターとして機能する。

創造するコラボレーションオフィス

基準階での平面構成は、中央に南北に開けた明るいワンルームタイプのオフィスを配置し、東側が立体的動線のあるコミュニケーションゾーン、西側が空調関連諸室などのバックスペースとなっている。開かれたオフィス空間とコミュニケーションゾーンを介して新たなコラボレーションを活性化させることを意図している。

開放的な執務空間を実現する構造計画

基準階は16×26 mのワンルームタイプのオフィス空間。南北に開けたこの空間をより開放的なものとするために、この部分の柱を極力細径で実現することが求められた。そのため、東西のコア部分に耐震要素(座屈拘束ブレースとSRC造連層耐震壁)を集約して水平力を負担させる架構計画とすることで、オフィス南北の柱を水平力から解放し、216mmという細径の柱を実現した。地震力を負担することになる座屈拘束ブレースと耐震壁の下部には、剛性の大きな基礎梁を配置して応力を杭に伝達している。地震時に大きな変動軸力の発生する杭については、スタンスを大きくすることで変動軸力を低減したり、支持層へ深く貫入させることで引抜き抵抗を利用したりして、耐震要素の集約を実現している。また、16mスパンを支える梁は両端ピン接合とし、端部をしぼった形状としてその部分を設備の配管・ダクトスペースとして利用することで、天井高の確保に配慮している。また、最上階や下層階ではこの計画をさらに工夫することで、細径柱さえ無い無柱空間や開放感のあるエントランスホールを実現している。

架構計画(平面)
-耐震要素を集約し細径柱を実現-

 
写真9   図4

建築計画に合わせ、耐震要素は両端のコア周りに集約している。東西方向には4箇所の座屈拘束ブレース、南北方向には2箇所のSRC造連層耐震壁を配置し、これらの耐震要素に水平力を負担させる計画とすることで、オフィス南北に配置された柱を水平力から解放し、細径(216mm)の計画を実現している。

架構計画(階層)
-最上階、下層階で架構を切り替えより自由度の高い空間を実現-

図5
図6

最上階では、大梁上部をパラペットと兼用させることで梁せい1500mmとし、16m×26.2mの空間を細径柱さえも無い無柱空間として実現している。1階・2階の柱スパンを倍とすることで、吹き抜けを利用した開放的なエントランスホールとしている。

SRC造連層耐震壁
-地震力を確実に地盤へ伝える架構-

全地震力を負担する厚さ600mmの連層耐震壁には大きな応力が発生する。これを梁せい3200mmのSRC造基礎梁で受け、応力を確実に杭に伝える計画としている。また、杭はあえてスタンスを広くとることで変動軸力を低減し、さらに支持層に7m貫入させて引抜きに抵抗させている。また、16mスパンを支える梁は両端ピン接合とし、端部をしぼった形状としてその部分を設備の配管・ダクトスペースとして利用することで、天井高の確保に配慮している。また、最上階や下層階ではこの計画をさらに工夫することで、細径柱さえ無い無柱空間や開放感のあるエントランスホールを実現している。

構造ディテール
-構造的合理性と建築・設備計画との整合-

 
写真10   図7

16mスパンの梁は端部をしぼり、ウェブのボルト接合のみとすることで細径柱に生じる応力を低減している。しぼった端部はダクト・配管スペースとして利用し天井高確保に貢献している。これらの大梁を同じせいの小梁でつなぐことで格子状にし、振動に対する床剛性を高めている。耐震壁直近のスラブは厚さを厚くし、地震力を確実に耐震壁に伝達できる計画としている。

ガラスカーテンウォールの構成
-幅16m×高さ25mのガラスカーテンウォール-

図8

基本的な構成はガラスの吊り構造としている。吊り構造とすることで横材はFB、縦材はロッドとガラスリブとしている。ガラスの自重はメタルポイント支持とし、ロッドを伝わって最上部から吊っている。風荷重は縦のガラスリブを介して横方向に配置したトランザム(FB)に伝達し、最終的に3本の柱に伝達している。FBはロッドが無くても座屈しないサイズとすることでロッドの初期張力をなくし、最上部の納まりをすっきりとしている。

建物概要

建物名称 株式会社トンボ鉛筆本社ビル
所在地 東京都北区豊島6-10-12
建築主 株式会社トンボ鉛筆
設計者 株式会社久米設計
施工者 清水建設株式会社
規 模 建築面積 1242.25m2
延床面積 4460.61m2
階数   地上6階
建物高さ 25.71m
用 途 事務所
構 造 S造、一部SRC造・RC造
写真撮影:エスエス東京 走出直道

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