震災と対策・昔から

 

地震と震災そして建築物の耐震のことを、
昔のことから考えてみましょう

日本における最も古い地震の記録は416年8月23日の河内地震です。それは、「日本書紀」の允恭天皇の頃に「・・河内国地震う」と記され、その後推古天皇時代、599年5月8日の大和地震の記録は、災害の記述―・・大和に地震あり、舎屋ことごとく破壊され、それで四方に令して地震の神を祭らせた―があり、これが最初の震災の記録とされています。地震の神を祭らせた―とあるように地震・震災を神業と考えていたようです。

その後の地震の記録は長い年月をかけ多数の研究者の努力で整備されています。その主なものは「理科年表」に出ていますので、だれでも容易に知ることができます。

そして、わが国の地震・震災の考え方に大きな影響を与えたのは、1847年の善光寺地震と1855年の安政江戸地震であったようです。江戸幕府は地震対策をとらなければならなくなり、また、地震予知は不可能だからそれより地震被害を少なくする研究をしたがよい、との考え方も早くもこの時代に出てきています。また、安政江戸地震では、一般の建物は山の手で被害が少なく下町で被害が多かったが、土蔵については下町で被害が少なく山の手で被害が多かったことなど、被害と地盤・構造(例えば土蔵と住戸の作り方の違い)の関係が観察され、さらに耐震法としての筋交い(壁内に斜めの木材を配置したもの)の効果まで江戸の人は認識していました。

しかし、近代科学としての地震と震災の研究は明治になってからであり、政府の文明開化の方針により、来日した外国人科学者によるところが大きいようです。横浜在住の外国人を驚かせたものの、地震としては大きくはない横浜地震が契機となって、日本地震学会(会長;服部一三、副会長;ジョン・ミルン)が1880年(明治13年)設立されました。日本地震学会の功績は、地震計を製作し地震観測網を整備したこと、地震に関する諸現象を広く取上げ、その後の地震災害の軽減に結びついたことでしょう。

1891年(明治24年)の濃尾地震(M=8.4 M はマグニチュードを示す)は、仙台以北を除く日本全国でゆれを感じるほどの大地震で、このとき生じた根尾谷断層は水平4km、垂直(縦方向の段差)5.5mで、その一部は現在でも観察できます。これを契機として、地震災害を軽減することを目的とした「震災予防調査会(初代会長加藤弘之、二代菊池大麓、三代大森房吉、最後が今村明恒)」が発足しました。

そして、1924年の関東大震災で東京では地震後に各地で火災が発生し死者10万人、建物の被害率は木造11%、鉄筋コンクリート造8.5%に対しレンガ造・石造は80%以上と、以後西欧型のレンガ造・石造は激減しました。その後も1944年東南海地震(M=8.0)、1946年南海地震(M=8.1)、1946年福井地震(M=7.3)と大地震・震災がつづき、これらの経験と研究の成果として、1950年建築基準法が制定され、世界に誇る近代建築の耐震設計法が規定されました。しかし、1964年の新潟地震、1968年の十勝沖地震でその近代建築が大きな被害を受けました。これに対し研究・検討が行なわれる一方、超高層建築が新しい設計法の確立により実現してきました。その間も1978年には宮城沖地震で近代建築に大きな震害が発生し、これらの研究の成果として1981年新耐震設計法が建築基準法に取り入れられました。並行して既存建築物の耐震診断・耐震補強方法も研究され確立してきたことは、多くの社会資本としての既存建築物対策として貴重です。

1995年の阪神大震災…海外の地震被害では当然として理解してきましたが、まさか日本ではと当日はテレビにくぎ付けになり、その後現地の惨状を見て我々の構造設計の仕事の重大さを再認識しました。新耐震設計法以後に建設された建物の被害が比較的少なかったことは救いでした。そして、昨年の新潟県中越地震、今年3月の福岡県西方沖地震と現地に行って被害状況を見てきました。

このように見てきますと、地震列島に住む我々として、いつ起きてもおかしくない大地震への対策の重要性は、ますます高まります。政府も地震予知から地震災害対策に重点を移し、増築対応など耐震改修促進を 意図した改正基準法が本年施行され、耐震改修促進法も改正しようとしています。


JSCAとしても今後以下のような活動を紹介したいと考えています。
本人
  • JSCAのHPを通じた耐震診断、耐震改修についてのわかりやすい紹介
  • 大規模なマンション、事務所から戸建住宅までの改修方法の実例紹介
  • JSCA会員の構造技術者の活動の紹介

これらに関しては、できるだけ早い時期に本コラムでご紹介いたします。


JSCA耐震診断補強委員会委員長 安部重孝(あべ しげたか)

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