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『地震-4』- 建築基準法と地震の大きさ

 
建物を建てる上で忘れてはいけない「建築基準法」という法律があります。
窓はどうしろ、階段の幅や勾配はこうしろと、結構細かい事まで決めていますが、
地震の場合には、
「建物が建っている間に何回か遭遇しそうな地震に対しては、ひびが入るなど多少の被害は受けるにしても、直して住み続けられる程度の壊れ方で収まる事」
「建物が建っている間に遭遇するかどうかの極めて稀におきる大地震に対しては、建物は使えなくなる程度に壊れたとしても、逃げる間もないような急な壊れ方をしない事」
この二つを旗印に掲げ、地震が建物を動かす力から、一本の柱がどれだけ頑張れるかを計算する方法まで、細かく定めてあります。「建築基準法」が制定されたのは今から50年ちょっと前の1950年ですが、制定されてから何度も何度も改定されています。

  1968年には北海道の十勝沖で大きな地震があり、学校などの鉄筋コンクリート造建物も大きな被害を受けました。このときの壊れ具合は、柱の腰壁と垂れ壁の間、柱だけの部分にきれいな×印が出来ました。あっと言う間に柱の上階を支える力が無くなる「せん断破壊」という壊れ方です。(図-1)
これらの地震被害を経験し、これではいけないと急遽、71年に基準法改正が行われました。
このときは、鉄筋コンクリートの柱の中にある縦の鉄筋をぐるぐる巻きにしている鉄筋(フープ筋とかあばら筋とか呼びます。)の間隔をそれまでより3倍細かく入れるようにしようと言った改訂でした。(図-2)

図-1 柱に×印の亀裂 図-2 あばら鉄筋を細かくいれる

1978年には宮城県沖地震が起き、仙台市内でも大きな被害が出ました。このときも又、1981年に基準法が改正されています。このときの改訂は、それまでの研究成果を全てつぎ込んだ大改訂で、地震に対する考え方から検討方法まで大幅に改訂されました。

図-3は、阪神淡路大震災のときに神戸市中区の一部地域を取りだし、被害状況を全建物について検査した結果です。被害状況と基準法が改定された年との関係を見ようと、建築年代毎のグループに分けてあります。
図-3 神戸市中央区の一部全数検査

1972年以降の建物をそれ以前の建物とくらべると、「倒壊または崩壊」あるいは「大破」した建物が急激に減っています。1972年から1981年までとそれ以降ではそう違いが見られません。
この図から、「基準法を守っていてもけっこう壊れる建物が多い」と言う事と、「最近はそれが大きく減ってきた」という二点が一目で解りましょう。地震により被害をこうむるたびに、壊された原因を研究し、法律を改正し続けてきた努力の賜物と言えましょう。
でも、まだまだ「基準法を守っているから安全」とは言い切れません。

「品確法」と略して呼ばれることが多い「住宅の品質確保の促進等に関する法律」という「住宅」に限った法律があります。<阪神淡路大震災の反省や、シックハウス対策・高齢者対応など住宅にはいろいろな問題がありますが、個々の建物で各問題点をどう解決しているかを公平に評価することで、消費者が選択する際の「良質目印」としよう>という法律で、レベルが高いほど高い等級を附ける約束です。
その中で、地震に対する安全性では、建築基準法を守って建物を作った場合を「等級1」、基準法で定めた地震の1.25倍の力に耐えられるようにした場合を「等級2」、1.5倍の力とした場合を「等級3」とランク付けをしています。
(地震保険が最近注目を集めているようですが、この「等級1」「等級2」「等級3」により地震の掛け金を10~30%割り引く制度を採用しています。安全率が高い建物は、掛け金が安くて良いという考え方です。)

ここでは基準法より大きい力を想定しています。基準法で検討すべき地震の大きさを決めてはいますが、これは「守らなければいけない最低基準」でしかなく、自然が牙をむいた時、人間が勝手に決めた範囲を超える大地震が我々を襲う事は十分考えられるからです。
(この、<基準法で定めた地震より大きめの地震を想定して設計する>という考え方は、地震災害時の避難場所や拠点になる学校建築や公共建物にも採用されています。)

HP部会 K.S

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