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『コンクリート』- コンクリートが爆裂する

 

コンクリート強度が高くなれば、
鉄筋コンクリート造は耐火構造ではなくなる?

火災が起きた時、木造建築は燃えやすいし、鉄骨造は溶けてグニャグニャになるけれど、鉄筋コンクリート造は大丈夫だとの認識が、一般的ではないでしょうか?建築基準法でも、1時間燃え続ける火災に対して7cmのコンクリートの壁なら耐えられるとしています。

しかしながら、ここで問題としているのは、超高層建築など用いられる高い強度のコンクリートは、意外にも、普通のコンクリートと比べて耐火性能が低いということです。


今まで使われていたコンクリートの強さを1とすると(もちろん今でも殆どの建物はこの程度なのですが)、近年、その3倍程も強さが高い「高強度コンクリート」と呼ばれるコンクリートを使用した建築物が多く建てられるようになりました。建物が高くなると、下の方の柱は上部の全ての重さを支えなければなりません。そのため、今までのコンクリートを使っていたのでは、下の方の柱が太くなってしまい、実際に使える面積が減ってしまいます。高強度コンクリートを使えば、細い柱ですみますので、建物を作る人にとっては朗報です。ところが、この高強度コンクリートに奇妙な性質があることがわかりました。柱を火災時のような高い温度で熱し続けると、コンクリートが破裂してしまう事があるのです。


写真-1は、コンクリート強度が異なる4種類の鉄筋コンクリート柱を加熱した後の状況です。いずれも「高強度コンクリート」と呼ばれるものですが、その中で一番強度の低い右端(Fc=48N/mm2) のものは隅角部が欠け落ち、一番強度の高い左端(Fc=120N/mm2)のものは縦方向の鉄筋をぐるぐる巻きにした肋骨のような細い鉄筋から外側のコンクリートがほとんど剥がれ落ちており、コンクリートの強度が高いものほど壊れ方が激しくなっています。これらは、「爆裂破壊」と言われており、強度が高いほど、またコンクリート中に含まれる水分が多いほど爆裂が生じやすいのですが、その原因は、高温に加熱した時にコンクリートの中の水分がうまく移動出来ない為に爆裂現象が起きると言われています2)。


写真-1 3時間加熱実験後の鉄筋コンクリート造の柱1)

「爆裂破壊」が生じるとどうなるのでしょう?

最も重要なことは、火災が終了するまで、人々が逃げ終わるまで、建物が壊れてしまわないことです。写真-1のように爆裂破壊が生じるとどのような問題が生じるのでしょうか。

コンクリートおよび鉄筋の性質の一つに、高温にさらされると、元の耐力(強度)を発揮できなくなる性質があります。爆裂により表面コンクリートがだんだん剥がれてくると、高温域は柱の内部へと広がり、より広範囲にダメージを与えます。今まで元の断面積で支えていた自分より上の階の荷重を、ぼろぼろと削られて面積は減るし、強さも弱くなった部分でささえなければならなくなってしまいます。そうなると、今度はコンクリートや鉄筋が潰れ始めるようなことにもなりかねません。このようなことになっては困りますので、断面積が少なくなる爆裂破壊は最小限に抑えなければなりません。

爆裂破壊を抑える方法は?

爆裂破壊を対象とした加熱実験はたくさん行なわれています。これらの中から爆裂対策の方法を紹介すると、鉄筋コンクリートの部材をモルタル、プレキャストコンクリート板、石膏ボード、鉄板等で被覆する方法があります。コンクリートの表面に耐火塗料を塗る方法もあります。縦方向の鉄筋をぐるぐる巻きにした肋骨のような細い鉄筋のさらに外側にそれらを守るようにもう一重鉄筋の網をかぶせてからコンクリートを打つ方法もあります。ユニークな方法として、ポリプロピレンやビニロンの短繊維をコンクリートに混入させる方法があります。火災時に短繊維が消失することによりコンクリート内部に空隙が生じ、この空隙がコンクリートの中の水分がうまく移動出来る道になり、高温域が柱の内部へと広がるのを防ぐ空気層となる事で、爆裂がおさえられると考えられています。

ポリプロピレンを混ぜたコンクリート

コンクリートの強度が高くなるほど、火に耐えなければならない時間が長いほど、必要な繊維量は増加するようです。ポリプロピレン混入による爆裂防止効果については、Fc=100N/mm2 までなら繊維を1.0kg/m3 混入することで爆裂を軽減でき、4時間以上の荷重支持能力が付与できること、1.5 kg/m3 混入することで爆裂をほぼ防止できることなどが報告されています3)。
コンクリートに繊維を混ぜ合わせると、繊維が一ヶ所に固まってしまったり、コンクリートが流れにくくなるので施工が難しくなるなどのことが考えられますが、振動棒を使う事で十分施工できるそうです。又、繊維を入れることでコンクリートの強度がへることは殆ど無いこと、アルカリ性のコンクリートが空気の影響を受けて長い間に中性化していく性質にも影響はないと報告されています。3)。現状では、短繊維をコンクリートに混入する方法は、爆裂防止に対して有効な手段の一つであるようです。


(RC系部会 K.H)

参考文献

1) 吉田正友、森田武:建築物の耐火対策、コンクリート工学、Vol.42、No.5、pp.121-124、2004.5
2) 丹羽博則、一瀬賢一、長尾覚博、江戸宏彰、上杉英樹:火災加熱を受ける鉄筋コンクリート柱内部の熱・水分移動に関する研究、その1、その2、日本建築学会大会学術講演梗概集、pp.27-30、2001
3) 黒岩秀介、陣内浩、小林裕、川端一三、西川泰弘、木村雄一、阿部剛士、嶋田孝一:日本建築学会技術報告集、第16号、pp.17-22、2002.12

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