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第25回業績賞

早部 安弘・田川 英樹・田口 拓望

新しい電波塔の開発と展開 受賞概要展示パネル

:建物外観
:建物内観
業績の概要

スマートフォンの急激な普及に伴い、基地局(アンテナ)の整備は携帯電話会社の急務である。その需要に対して、建設会社とメーカーが協力して、開発から施工まで一貫して取組んだプロジェクトである。一般的な基地局における電波塔は、アングル鉄塔が多く、建設コストが安い一方でアングルにより風切音が発生し、近隣住民から建設を拒否されるといった問題がある。そこで、「コストダウン・高性能・騒音配慮」をコンセプトとした「新しい電波塔」(高さ40m)を開発した。このプロジェクトは、建設会社およびメーカーとしては稀有なマスプロダクトへの挑戦である。自動車や家電製品のように部品やパーツのコストダウン設計を行い、試作品から普及品の大量生産への移行など、通常の建築物のような一品生産ではありえない工程を実現し、国内におけるインフラの整備に貢献した。以下に3つのコンセプトの内容を紹介する。


【コストダウン】

塔体の柱材をRC 製、特に既製杭を利用することで大量生産への対応とコストダウンを図った。長さ40m の既製杭は製造不可能なので、約10m 毎の接合方法が課題であった。鋼管柱の接合方法を参考に、かつ実大実験を行いながら「新たな接合部」の開発を進めた。また、コンクリート既製杭の片持ち柱では不経済であるので、支線式鉄塔のように構造用ケーブルを併用した。アンテナ取付部から鉄骨梁を跳ね出して、初期張力を導入することで、ケーブル構造としての安定性を高め、建設面積の最小化をも図った。ケーブルの初期張力は既製杭へのプレストレスとなり、既製杭の曲げ耐力を上昇させるという相乗効果も生んでいる。更にケーブルを上下2 段に配置することで、柱脚部を基礎の窪みに置くだけの構造とした。ケーブルからの圧縮力が柱脚部では半剛接合状態となり、水平荷重によって既製杭の柱体に生じる曲げモーメントが均一化され、柱体全体を同断面(φ700)で設計することが可能となった。また、使用するケーブルには耐久性が高く、被覆の必要がない亜鉛メッキPC 鋼より線を採用した。


【高性能化】

一般のアングル鉄塔や鋼管鉄塔は片持ち柱形式なので、強風時の水平変形は頂部へ行くほど大きくなる。開発された「新しい電波塔」は超高層ビルのアウトリガー形式を応用し、アンテナ取付け部の鉄骨梁とケーブルでアウトリガー状態を形成し、頂部の曲げ戻し効果を生んでいる。これにより強風時の頂部の回転角が1°以下にすることに成功し、高性能な電波塔が実現した。


【騒音配慮】

鉄塔から生じる風切音の主原因は、アングル材の刃の部分からの笛吹き音である。「新しい電波塔」では塔体の構成部材にできる限り円形断面(ケーブル、既製杭、円形鋼管)を採用し、風切音が生じにくいように配慮した。また、ケーブルとφ700 の柱体で構成されたフォルムは、景観を配慮した「新しいスタイル」の創出にも貢献している。

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