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夏休み てく・テク 山手線

=近代のはじまりを感じる小旅行=

 

新宿駅【Shinnjyuku-station】

東京の西方からJR 中央線 で、都心をめざしてやって来た人々が、環状線の山の手線に乗り換えする新宿駅は、今、南口が改築工事中です(2004.05)。
中央線 上り電車を降りてホームで周りを見渡すとこんなシーンが展開されます。
<写真をクリック、ウィンドウが開いて画面が現れたら、画面内をドラッグ>
写真1東側

迷宮の中に迷い込んだようで、なかなか魅力的な感じ。
<写真をクリック、ウィンドウが開いて画面が現れたら、画面内をドラッグ>
写真2西側

じっと目を凝らして見ると、 新宿駅の成り立ち や、数度にわたる路線の増設や改築を繰り返してきた変遷を物語るいろいろなタイプの橋脚が見えてきます。
ちょっとした、タイムトラベルをしたように感じます。その時その時で、材料も技術も違っています。また、形も違っています。それらは上部の南口駅舎や、甲州街道の橋梁を支えているのですが、支え方に、なんとバリエーションが多いことでしょう。
写真1東側には左から4つの造られた”その時”が見えます。写真2西側には左から3つ”その時”が見えます。
違いがわかりますか、一番古い時代はどれでしょう、そしてまた一番新しいのはどれでしょう。
写真3 クリーム色く
塗られた橋脚
写真4 正面の緑色の
X型の橋脚
写真5 灰色でボリュームが
有る橋脚
写真6 あずき色のごちゃ
ごちゃ見えている橋脚
写真7 クリーム色の鉄骨板材 と 上下にこぶ状の
台付き と 垂直線と水平線だけの橋脚 写真8
ちょっと解説をしておきましょう。
写真1東側は左から、クリーム色の鋼材を溶接した骨組み( ラーメン 構造)写真3。 正面の緑色のX形に組み立てられた鉄骨ブレース )が見えるものは、細い鉄材を丸い頭の鉄の鋲( リベット )で組み立てたもので、柱と梁とブレースの骨組み( ブレース 付き ラーメン 構造)写真4
次の灰色でボリュームが有るのが、コンクリートを用いた骨組み(これも同じく ラーメン 構造です)写真5、 最も右側のあずき色のごちゃごちゃ見えているのが、断面がH形をした鋼材H形鋼 と言います。)を組み合わせた骨組みです。写真6
写真2西側は左から、クリーム色の鋼材を溶接した骨組み( ラーメン 構造)写真7左ですが、先程の一番左写真3 とは鋼板の使い方がちょっと違います。真ん中の灰色の柱と梁は、コンクリートを用いた骨組み( ラーメン 構造)写真7,8ですが、これまた、先程のコンクリート製とは形が違います。写真1東側では柱をつなぐ形がアーチ状ですが、こちらは直線で結んでいますし、柱の上と下にこぶ状の台が付いているようです。最後の右側の灰色は、また、コンクリートを用いたラーメン構造写真8右ですが、これも他のコンクリート製のものと違った形です。すっきりと垂直線と水平線だけで形つくられています。
    
もう一度戻って、最初の2枚写真1,写真2の写真をさらによく見ると、鉄骨で出来たものは、足下が、細く、くびれています。(設計では ピン支承 と呼ばれるものです。)何故こうしたのでしょう。また、何故こんなにも違った形が有るのでしょう。いろんな疑問が湧いてきます。
この疑問の答えの一つは、徐々に拡張を繰り返した駅舎や道路の造られた、時代時代によって手に入る材料や、その材料の強さ〔強度〕に違いがあったこと、また、その時の技術や、規則や法律がそれぞれ違っていた事があげられるのでしょう。さらには、建造物をどう造ろうか考えたその当時の技術者が居ます。たとえ同じ時代、同じ材料、同じ技術でも、技術者によって、形や材料の使い方が違います。新宿の高層街の建物や、皆さんの周りにある建物の形や材料が一つとして同じ物が無いのとおなじです。
さて、先程の質問、どれが一番古いか、新しいか、わかりました?
一番新しいのは、写真1東側の一番右、あずき色の仮設の構造物です(今南口ではバスターミナルの増築工事が線路の上に展開されています、そのための仮の支え材と思われます)。
一番古いのは、はっきりとわかりませんが、材料や形からみて、写真1東側の中央、緑色の鉄骨組立柱に斜材の架構か、その右のアーチ型のすき間を持ったコンクリート製でしょう。(上の工事現場の道路上には大きく“大正桁”と白ペンキで書かれていました、どちらの形式の橋なのかわかりませんが、古い橋なので工事中にうっかりして重い物を置かない様にとの注意書きの様でした、また、同じ組立鉄骨形式の橋脚は、神田〜お茶の水、神田〜秋葉原に多数残っています。)
ちょっと結論が曖昧でしたか、鉄骨の方は、リベットを使用していること、H型鋼が使われていないこと、コンクリートの方は、コンクリートのボリュームが他のコンクリート製の橋脚よりあること(鉄筋やコンクリートの強度の高いものを使用出来なかったので、コンクリート断面積などを大きくして、単位面積当たりの力〔応力度)を小さくして耐えるようにしていたので、ボリュームが大きくなる傾向にある)、形にアーチを使っている(型枠や配筋に手間が掛かって今では直線が多い)ことなどから類推できます。詳しく新宿駅の構造物の歴史を調べてみなくてはいけませんね。

※掲載された記事は執筆当時の法令・技術情報に準拠して執筆されています。ご留意ください。

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