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夏休み てく・テク 山手線

=近代のはじまりを感じる小旅行=

 
写真1 中央改札口付近
写真2 山手線ホームから
降りた場所
写真3 18番線ホームから
10番線ホームを見る
写真4 11・12番線から隣の
9・10番線ホームへ
階段を使わずに行ける。
写真5 西郷さん付近から
1番線ホームが見
える。外側のフレームがよく見える
写真6 1番線ホームにある
昔の外側フレーム
写真7 9番線ホームにある
昔のフレーム
写真8 8番線ホーム昔の
フレームと新しい
フレームの境目
写真9 高架橋新設により、
梁が切断され、柱だけが残っている
写真10 コンコースにパンダ
橋を支えている柱
がある

上野駅【Ueno-station】

 東北地方の玄関口、現存する山手線の駅の中でも二番目に歴史が古い上野駅を見てみましょう。
 (一番古いのは品川駅)
 上野駅の開業は明治16年(1883年)となっています。但し現在の駅舎は関東大震災にて焼失したので昭和初期の建物です。
 さて、皆さんが「上野駅を利用した時の駅舎,ホームについての印象は?」と聞かれたら何を思い浮かべますか。
  • 天井の高いコンコース(中央改札部分)写真1
  • 頭の当たりそうな通路 写真2
  • 在来線ホームが2層になっている。写真3
  • 9・10番線から11・12番線へ、階段を使わずホームの行来が出来る(頭端式)写真4
  • 地下の新幹線ホームから地上部の改札までが長い
 その他いろいろあると思います。上野駅は結構複雑な構造をしている駅舎です。 上野駅の古い歴史及びたくさんの列車の行来がある駅を象徴しているようです。
 ここで少し視点を変えてみましょう。我々も改めて上野駅を見てみましたが、その印象は少々違ったものでした。 それは右の写真に見られるような、増築・改修の跡が多数あることです。 電車を止めずに駅を改修するのは大変難しい工事だと思います。 多分新たに建替えた方が、綺麗で安価なものが出来ていたことでしょう。いろいろ苦労の跡が伺えます。
 これらの写真を参考にすると上野駅のホーム上屋は、出来た当時はこんな形だった考えられます。

 皆さんが普通に目にする駅のホーム上屋、いろいろな形をしていますね。 そのホームの上屋も基本的な幾つかの形があるようです。
やま型 複合型2
 それでは上野駅はというと、上記のやま型と複合型2を1つおきに交互に組み合わせた形となっています。
これは何故だと思いますか。
 やま型のフレームは、風や地震の時の横からの力に対して、ホームに平行方向は柱と柱がたくさんつながっているため倒れづらいのですが、ホームに直行方向は柱2本のみのため倒れやすいのです。
 複合型2はホームとホームをつなげるため、ホームに直行方向に対しても柱が多くなり倒れづらくなりますし、ホームに柱がないため利用もしやすくなります。しかし柱と柱の距離が長くなるため、雪などの上からの荷重に対して弱くなり、その分を補おうとすると鉄骨を多めに使うためコストが高くなるのです。
 この両方のよい点を取ろうとした結果が2つのフレーム形式の組み合わせではないかと思われます。
 それでは、現在はどの様な形となっているでしょうか。
上野駅は上野公園側の出口(公園口)が3階にあるため、3階に大連絡通路・公園口通路・それと新しく出来たパンダ橋がホームの上を横切っています。そのため、ホーム上屋は御徒町駅側と、鶯谷駅側のホーム両端の一部しか残っていません。
 御徒町側のホームの上屋は前述の昔ながらのホームが残っています。 鶯谷駅側はH断面の鉄骨で造られた、Y型をした骨組みです。 よく言えば現代風でシンプル、悪く言えば単純で歴史の重みを感じない骨組みではないでしょうか?
 これからのホームは多分全てH断面の鉄骨や鋼管等でシンプルに造られていくでしょう。 どんどん昔の風景が消えて行きます。寂しい気がします。

写真10 御徒町側ホーム上屋H型鋼にて出来ている 写真11 3階の連絡橋がそのままホーム上屋になっている。
 昔から東北の玄関口と呼ばれ、地方からの多くの人が東京での生活を夢見て降り立った上野駅。 様々な人がこの駅に思い出を持っていることと思います。 この上野駅、1990年代には全面建替えプランの話が持ち上がったと聞いています。 バブル崩壊にて計画は白紙に戻され、2000年前後の大改修にて利用者の使い易い駅に生まれ変わりました。
 建替え、改修どちらが良かったかは、比較できないので言及はしません。 どちらにしても、これからの建築計画は昔の美しい風景(情緒)を残し、多くの人の“思い出”が蘇る計画であって欲しいものです。

※掲載された記事は執筆当時の法令・技術情報に準拠して執筆されています。ご留意ください。

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