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木造建築の構造設計

 

JSCA木造標準仕様書

木造建築と一口にいっても、大工さんが建てる住宅もありますし、工場生産のパネルを組み合わせる住宅も、寺社建築も、体育館のような大きな空間もあります。それぞれ、在来軸組み構法、枠組み壁工法、伝統工法、大断面工法、などと呼ばれる工法を使って造られています。

この中で、大空間を作るためには大きい断面積の材料が必要となりますが、これらを天然の材に求める事はできないので、冒頭に述べた加工品の中から小さい板切れを集めて大きい部材に加工した大断面集成材が多く使われています。これら加工材を使う建築や工場生産品を多くつかうハウスメーカーの住宅などについては、品質の規定や検査方法がかなり明確化されており、それに基づいて構造計算が行なわれています。ところが、一般住宅に用いられる在来工法でつかわれる製材については、長い歴史をもつがゆえに、伝統的な方法でしか品質の管理がされてきませんでした。阪神淡路大震災でも多くの在来木造建築物が倒れました。腐食等の老朽化もありますが、新築建物も壊れています。これは、地震に対して安全かどうかの検討が不十分であった為と考えられます。そして、安全かどうかの検討をするにあったては、材料や接合部の性能がはっきり判っている必要があります。


平成12年に、製材と枠組み材の許容応力度の規定が新たに定められ(建設省告示1452号)、従来の手法の延長である「目視等級区分(8)」の他に「機械等級区分(9)」による方法も加えられました。しかし、この方法を用いるためには使用する木材が機械等級区分された材でなければなりませんが、現状の流通状況を考えるとなかなかむずかしいものがあります。さらに、含水率やヤング率を指定する方法で品質の均一化をはかる方法もありますが、実際の材料一つ一つがその性能を持っているかどうかをチェックすることも現実難しいところです。

コンクリートや鉄筋、鉄骨などの工業製品と比べると、木造は自然の材料を用いる為ばらつきが大きいのはやむをえないところですが、それにしても品質の均一化と言う面ではまだまだ問題があると痛感しています。


JSCAでは、品質の均一化を広く推し進める方策の一つとして、製材・枠組み材・加工材など全ての材料や接合方法に対して、品質の規定とその検査方法を確立し、世の中に普及させる必要があると考えています。そこで、木質系材料の品質の規定や検査方法について調査・整理し、成果物として「木質構造全体を網羅した仕様書」を作成しました。


対象とする建物は、在来軸組み構法、枠組み壁工法、大断面工法を網羅したものとし、住宅のような小規模のものから大規模木造建築まで全ての範囲で使えるものを目指しています。

仕様書前文と詳しい解説はJSCA編「木造建築構造の設計」に掲載されている他、図面版としてまとめたものをホームページからダウンロードして使用できるようにしました。また、「JSCA木質構造部会・品質管理WG」では、これからも継続的に仕様書と解説文のメンテナンスを行う予定です。その参考資料といたしますので、内容についてご意見がありましたら、JSCA事務局宛(info@jsca.or.jp)に「木造仕様書について」と記してメールでお知らせください。


■仕様書

JSCA木造標準仕様書

JSCA版木質工事標準仕様書(2011年版) を参照ください → こちら

※掲載された記事は執筆当時の法令・技術情報に準拠して執筆されています。ご留意ください。

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