2025.6.24

会長挨拶

     

「過去、現在、未来」

Past、Present、Future

2025年4月、「未来社会の実験場」をテーマにあげた大阪万博が大阪夢洲で開催され、当初心配されていたことも無かったかのように賑わっています。そこには様々な形態の国内外のパビリオンが華やかさを競い合うように配置されています。これらのパビリオンの具現化には間違いなく構造技術者の存在があり、多くのJSCA会員の方々が関係しています。また、JSCAとして公表が可能ないくつかのパビリオンの構造設計を発表する場を予定しています。是非、皆さんも大阪万博に足を運んで各パビリオンの展示物を鑑賞するのと同時に、パビリオン自身が持つ創造力豊かな「形態」や「ディテール」から構造や「力の流れ」を意識しながら鑑賞していただき、構造設計の面白さ・楽しさを、さらに、「形を創る」うえでの構造設計の重要性を感じていただければと思います。

JSCAの前身である「構造家懇談会」から始まり44年が経とうとしています。美と経済、心と技術の調和を保ちつつ、建築に機能を達成し、自然災害から人命と文化の尊厳を守るとした、設立趣意書の骨子から改めて、建築構造技術者の役割りを考えさせられました。基本にあるのは安全・安心な建築を構造技術の視点からサポートし、建物の構造性能をしっかりとクライアントに自らの口で説明することにあると考えます。大地震時に建物がどのように挙動するかなど建築基準法では明文化されていません。まして、一般のクライアントは知る由もありません。大地震だけでなく台風時など様々な外乱に対し構造性能を説明することが重要です。

JSCAには構造設計事務所の方、総合設計事務所の方、建設会社の方など背景が異なる建築構造技術者が所属しています。それらの方々はJSCA本部や全国にある8支部においてデザイン委員会や技術委員会など多くの委員会・部会のなかで活発に活動しています。中には若い人が主体的に運営している部会もあります。若い建築構造技術者においては会員になるだけではなく、JSCA活動に参画することによって自己研鑽やベテラン建築構造技術者の知識の継承にもなるものと考えます。JSCAの課題である会員の高齢化も、若い構造設計者の積極的なJSCA活動への参加により良い方向に進んでいくものと感じられます。

 これからも研鑽の場、コミュニケーションの場としてJSCAに参画し、後世に良質な社会資本を残していけるよう会員の皆さま方が互いに連携し、活発に活動していくことがJSCAの持続的発展に繋がっていくものと考えています。皆さまのより一層のご支援をお願いいたします。

小林秀雄