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第35回

奨励賞

Port Plus 大林組横浜研修所/ 百野 泰樹

建物名称 Port Plus 大林組横浜研修所
所在地 神奈川県横浜市中区弁天通2-22、23
主要用途 研修所
設計監理 株式会社大林組
施工 株式会社大林組
建築面積 397.58㎡
延床面積 3,502.87㎡
階数 地上11階・地下1階
最高高さ 44.1m
主要構造 地上 木造・地下 RC造

 

 本作品は、「次世代型研修施設プロジェクト」として、木造木質建築の未来を拓くべく日本初の高層純木造建築に挑戦したものである。地上部高さ約45mの主要な構造体(柱・梁・床・壁・屋根)すべてを木造とし、現在の技術、法規制の中で最大限木材を活用し、木材の可能性を提示することを企画の重要な柱とした。

 純木造の架構計画はラーメン架構を主体とし、東西方向は「純ラーメン架構」を4面、南北方向はCLT耐震壁とフロア中間レベルの剛接梁を耐震要素として用いた「耐震要素付きラーメン架構」を2面配置した。主な材料として、柱梁にはカラマツのLVLと集成材、床や耐震壁にはスギのCLTを採用した。地震や風の外乱に対して架構全体でバランスよく抵抗させるという構造設計の要求と、明快で美しい木軸架構のファサードデザイン、プランの自由度や明るく開放的な研修空間といった建築的要求が合致した架構計画である。免震構造を採用し大地震後も建物の継続使用が可能な計画とした。耐震性能目標は「極めて稀に発生する地震動に対して、部材応力は弾性限耐力以内、層間変形角1/120以下」と定め、地震後の構造躯体の健全性や、高層建築における外装材の変形追従性などに配慮した。

 高層純木造建築の実現に向け「剛接合仕口ユニット」を新たに開発した。LVLを主とした柱梁仕口のユニットは、「200mm厚の貫(ぬき)構面」を「150mm厚のGIR接合構面」で挟んで綴り合せ、500mm厚の断面となる。貫の材料に200mmの超厚合板を採用し木材接触部のめり込み強度を高め、架構の構造性能を向上させた。1ユニットのサイズは、宿泊室のモジュールや運搬・楊重計画の観点から、柱梁仕口を中心に4000mm×2800mm(=階高×1スパン)とし、曲げ応力の小さい柱・梁の中央部に現場継手を設けた。

 ファサードはダブルスキンカーテンウォールとした。研修室の熱負荷を抑えて環境性能に寄与するとともに、アウターサッシは被雷導体としても機能する。CLT床の高い断熱性能を活かしたダクトレス床吹き出し空調を採用し、木造梁の貫通スリーブは最小限の計画とした。基準階の階高は4m、直天井で梁下有効高さ約2.7mを確保した。

 横浜関内の密集市街地である当敷地に、地上11階建ての純木造建築を実現した。木材使用量は1,990㎥、木材利用による二酸化炭素固定量は約1,650tonに相当する。大規模な森林が長い年月をかけて吸収する炭素量を都心のビルに固定することができた。

百野 泰樹

生  年 1979年(大阪府生まれ)
出身校 京都大学大学院 工学研究科建築学専攻 修了
主要職歴 2004年 株式会社大林組 入社
主要作品 太陽生命日本橋ビル/京王プレリアホテル札幌/ 帝京大学先端総合研究機構/日本生命熊本ビル

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