JSCA賞 受賞者JSCA AWARD WINNERS

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第35回

作品賞

大阪梅田ツインタワーズ・サウス/ 九嶋 壮一郎

建物名称 大阪梅田ツインタワーズ・サウス
所在地 大阪市北区梅田1-13-1
主要用途 百貨店、カンファレンス、オフィス
設計監理 株式会社竹中工務店
施工 株式会社竹中工務店
建築面積 10,359㎡
延床面積 259,372㎡
階数 地下3階・地上38階・塔屋2階
最高高さ 188.9m
主要構造 S造・CFT造・SRC造

 大阪・梅田駅前は、230万人が行き交う大阪の玄関口である。本作品は、当地で道路を挟む建築主2社の経営統合を機にスタートした。本作が大阪梅田の賑わいの起点となり、街と街を立体的に繋ぎ、活力溢れる空間を生むことを目指した。

 複雑な立体形状が特徴の超高層制振建築である。2つの街区を接続したL形基壇部を百貨店、その片側へ積層する超高層部をオフィスとしている。複雑な形状を実現し、様々な可能性を最大化するために、「力の流れをデザインする」を構造デザインの羅針盤として掲げた。

 L形基壇部百貨店は、2つの街区を道路上で「繋ぐ」ことにより、連続する売場とした。自由度に富む商空間のために、制振・耐震要素はバックヤードへ配置した。地震時に建物へねじれが生じないよう、剛性に富む鋼材ダンパーを超高層が積層する側のバックヤードへ集約し、剛心と重心を近接させた。超高層が積層しない低層側には粘性ダンパーを重点的に配置し、揺れを効果的に低減した。この制振計画を、剛強な超高層側をBody、しなやかな低層側をTailになぞらえ「ダンピングテイル制振」と名付けた。地震時にL形接続部で最大となる面内曲げモーメントは、平行する2本の大断面鋼製ボックス梁の偶力として確実に負担している。鉄道会社である建築主の線路をイメージし、「レイルビーム」と呼んでいる。

 超高層部オフィスは、L形基壇部により励起する頂部ムチ振り、高次モードによる中層部変形、ねじれに留意した。「連ねる」をコンセプトとし、日射熱取得率を50%低減する外装鉛直フィンと調和する「列柱架構」を採用した。本架構により、ねじれ剛性向上と、剛と柔のコアフレーム設置が可能となった。剛フレームが頂部変形を抑制し、柔フレームでは中層部の世界最大級6,000kNオイルダンパーが効率良く地震エネルギーを吸収している。

 240mにわたるL形基壇部ファサードは、軽やかさを目指し、意匠設計者と議論を重ねた。折紙をヒントに、下地を設けず厚さ3mm・高さ5mのアルミ単板を「折曲げ」て強度を確保している。山折・谷折により「稜線」を形成し、端部には「かえし」を設けた。パネル間に緑を織り込み、百貨店のアクティビティを街へ映し出すファサードは、新たな都市景観を創出している。

 8年に及ぶ工事を経て完成した本作品。賑わいの起点となりながら、街の回遊性を高め、「歩いて楽しい大阪梅田」が実現した。

photo by 母倉 知樹

九嶋 壮一郎

生  年 1976年(北海道生まれ、静岡県育ち)
出身校 大阪大学大学院 工学研究科地球総合工学専攻 修士課程・博士課程修了
主要職歴 2001年 株式会社竹中工務店 入社
主要作品 あべのハルカス/ヨドコウ桜スタジアム/日亜化学工業諏訪技術センター/ トヨタモビリティ新大阪名神茨木店/ 大阪・関西万博リングPW西工区(実施設計)(施工中)

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