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第35回

奨励賞

オーテピア/高知新図書館等複合施設/ 渡邊 朋宏

建物名称 オーテピア/高知新図書館等複合施設
所在地 高知県高知市追手筋2-1-1
主要用途 図書館、博物館、駐車場
設計監理 佐藤総合計画+ライト岡田設計
施工 大成建設・ミタニ建設工業・有生JV
建築面積 4,379.12㎡
延床面積 23,760.88㎡
階数 地下1階・地上9階
最高高さ 38.51m
主要構造 中間層免震 上部・S造一部PRC梁 下部・SRC造

 

 本計画は、日本初の県と市の合築図書館の試みである。そこに、高知市が運営する「声と点字の図書館」と「みらい科学館」が併設された、高知の「知」を集結した施設である。よさこい祭りのメイン会場となる追手筋に面し、隣接する高知城、帯屋町アーケード、ひろめ市場といった、高知市を代表するエリアであることから「四周に語りかける」建築を、知が集まる『高知の樹』をコンセプトに、「新しいタイプの図書館空間」を目指した。最大の特徴は、書庫をフロア中央に配置して開架スペースで囲むプラン。中央の書庫が『情報の幹=耐震の幹』と重なり、書架間に耐震ブレースを組み込んだ新たな図書館空間のあり方を追求した。

 『高知の樹』の具現化と計画地特性に適合させる、特に注力した構造計画のポイントは、1.南海トラフの巨大地震と津波等に対する高耐震性、2.液状化対策と支持層不陸の克服、3.平面的にズレながら積層する断面構成、である。これらを免震効果と複合機能に見合う幹、枝、葉に見立てた架構を構想した。

 地震と津波等に対し、中間層免震で全体の応答低減を図ると共に、漂流物衝突による躯体損傷でも自立できる、大樹が大地に根差す耐震壁付きSRC造で力強さを表現した。また免震層上下の地震力低減効果に差異がないよう、非免震側の1階には床免震を用いて安心・安全の向上に努めた。基礎形式は、砂杭による液状化対策と支持層の急激な不陸(約15m)に対し、広範囲で誤差が少なく支持層を連続的に把握することができる「音響トモグラフィ地盤探査法」を採用し、3Dで支持層の可視化を行い、鋼管杭の製作と施工に万全を期した。免震上部は、幹と枝並びに葉の架構構成を鉄骨造とし、中央の書庫エリアを「耐震の幹」に見立てたボックス柱と二重鋼管ブレースを集中配置し、枝となる周囲の開架エリアをH400梁でシンプルに構成した。曲げ負担する架構は、応答低減により径長さ比1/20以下の鋼管柱〇-318.5で空間スケールにマッチさせた。外観の特徴である平面がズレる積層デザインを、外周片持ちスラブの出寸法で調整した。葉をモチーフとしたGRCルーバーは、面外耐風梁の役割を兼ねる中間庇で支持した。内外に変化する片持ちのばらつきには、GRC内蔵鋼材と吊りロッドを配置した。この場所だからこその特徴と課題を、インテグレーションにより実現させた一つの形である。

photo by 川澄・小林研二写真事務所

渡邊 朋宏

生  年 1969年(千葉県生まれ)
出身校 日本大学大学院理工学研究科建築学専攻 修了
主要職歴 1995年 株式会社佐藤総合計画 入社
主要作品 スポーツランドひらか/天津オリンピックセンタースタジアム/ 維新百年記念公園陸上競技場/高知県庁舎免震レトロフィット/ 東京ビックサイト南展示棟

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