JSCA賞 受賞者JSCA AWARD WINNERS
第36回
作品賞
長屋 圭一 / エスコンフィールドHOKKAIDO
建物名称 | エスコンフィールドHOKKAIDO |
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所在地 | 北海道北広島市Fビレッジ1番地 |
主要用途 | 観覧場、公衆浴場、ホテル |
建築主 | 株式会社ファイターズ スポーツ&エンターテイメント |
設計監理 | 株式会社大林組 (設計協力 HKS, Inc.) |
施工 | 大林組・岩田地崎建設特定建設工事共同企業体 |
建築面積 | 47,085㎡ |
延床面積 | 121,563㎡ |
階数 | 地下2 階、地上6階 |
最高高さ | 71m |
主要構造 | S 造、SRC 造、RC造 |
エスコンフィールドHOKKAIDOは、2023年春に開業した北海道日本ハムファイターズの本拠地である。「世界がまだ見ぬボールパークをつくろう」というスローガンのもと、選手ファーストと観客ファーストの両立を追求し、野球観戦の場にとどまらず、都市公園の中核を担う多目的施設として、地域住民や観光客が年間を通じて利用できる空間を目指している。収容人数は約35,000人で、選手が最大限のパフォーマンスを発揮できる天然芝のフィールドを備えている。観客席に加え、周遊可能なコンコースやホテル、温泉、サウナなど、多様なスタイルで臨場感あふれる観戦体験を提供している。
半屋外環境で芝を育成するために、フィールドには十分な太陽光と風を取り込むことが求められる。そのため、シーズン中に毎日でも確実に開閉できる可動屋根と、屋根を閉じた状態でも太陽光を取り込める透明性の高いガラス壁を軸に、構造計画を練り上げている。
屋根は、野球の飛球空間と芝の育成条件を効率的に満たし、北海道の原風景と調和する切妻形状を採用している。比較的緩やかな勾配の屋根には、あえて雪を積もらせることで周辺への落雪を防ぎ、年間を通じてスタジアムから全方位への動線を開放している。
フィールドを覆う可動屋根には、重力に逆らわない水平方向のシンプルな駆動方式を採用している。3ヒンジトラス架構は、軸力効果によって建物の高さを抑えつつ、温度や屋根の開閉に伴う支持条件の変化にも追従できる。この特性に加え、大断面や斜柱を特徴とする屋根を支えるガーダー架構の堅牢さが、開閉時の安定性を高めている。スタンドを覆う固定屋根では、積雪荷重や温度変化に伴う支点の変形を、回転変形を含めて球面すべり支承が吸収し、免震効果が観客席上部に設置された照明や音響機器の落下リスクに対する安全性を大幅に向上させている。
ガラス壁では、片持ち状に自立した平面トラス柱に対し、頂部の庇を利用して水平拘束を加えることで、構成する部材数の最小化や部材のスリム化を図っている。足元では、トラスをバックステイの応力状態に呼応した形状にし、コンコースの開放感を高めている。さらに、大型可動扉との組み合わせにより、光とともに人や風をスタジアム内に取り込み、外部とのシームレスな境界を実現している。
写真 撮影 川澄・小林研二写真事務所
長屋圭一
生年 1975年(奈良県生まれ)
出身校 東京工業大学大学院 理工学研究科建築学専攻 修了
主要職歴 2000年 株式会社大林組 入社
主要作品 神奈川県立がんセンター/世界聖教会館/ 大正大学附属図書館・すがも鴨台観音堂