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第36回

奨励賞

刀田 健史 / 天草市庁舎

建物名称 天草市庁舎
所在地 熊本県天草市東浜町8-1
主要用途 庁舎
建築主 天草市
設計監理 株式会社日建設計
施工 安藤ハザマ・吉永・中村JV
建築面積 3,741.26㎡
延床面積 9,992.19㎡
階数 地上4階
最高高さ 16.95m
主要構造 RC造一部木造、基礎免震構造

 

 熊本県天草市において老朽化した旧庁舎を建て替え、新たに防災拠点とすべく建築された市庁舎である。2回目のプロポーザルで要求面積が減少し、既存庁舎を使いながらの工事が与件化されるなど経済合理性が求められた。さらに、高齢化といった天草市の社会情勢変化に対応すべく、既存棟を避けながら残りの敷地いっぱいに「広い」床を設け、利用者の使いやすい「低い」庁舎とすることを目指した。防災拠点としての高い耐震性能を担保すべく基礎免震構造を採用して外力を低減し、以下の工夫を試みた。
 平面的には、外周を囲む「アウタースペース」部分に個室、縦動線、水廻りを配置し、耐震壁を内部執務空間との境界に集約することで、鉄筋コンクリートの細柱だけが林立する自由な床を内部に確保する計画とした。約2,400㎡の内部執務空間は主として長期軸力を負担する鉄筋コンクリート造細柱により支持させた。コンクリート強度はFc30を基本としたが、1・2階の内部細柱はFc60のPCa柱を採用して部材サイズを400×400まで縮小し、見通しのよい広い空間とした。
 断面的には、使い方に応じた3種のフロアを積層し、層ごとに最適な構造、設備システムを組み合わせた。1,2階の床梁はフラットスラブ構造(フラットビーム構造)を採用している。通常フラットスラブ構造は外周などの耐震要素接続部を一般的な柱梁とするが、慎重な検討を経て外周梁まで含め当該階のすべての梁をフラット化することで「低い」庁舎としている。1階柱頭のキャピタルは2階床スラブ上に張り出す逆キャピタルとした。建築計画も地震時の業務継続性に配慮して1・2階を無天井としたため、1階天井はフルフラットの打放し表現となり、開放的な執務空間とした。
 屋根は、ほとんどすべてを木造化して建物を軽量化している。基本設計段階から市内業者と市産材の調達について協議し、天草市産材を積極的に活用した。入手しやすい105角の4m製材を用いて、スパン8.1mを持ち送り形式の平面トラス型重ね梁により架け渡し、木製材が繊細に張り巡らされる意匠性を有しつつ、屋根を支持した。
 本建物の実施設計中には熊本地震が発生した。敷地近傍の活断層で同規模の地震が生じたと想定した地震動を当時の知見を踏まえて作成して設計に組み込み、敷地特有の地震環境に配慮した、高い耐震性能を有する免震構造とすることができた。
 以上を通して天草の地に、できるだけ広く低い庁舎を、安全かつ合理的に実現した。

写真 撮影 外観 エスエス
      内観1階 太田拓実
      内観議場 太田拓実

刀田健史

生年 1985年(千葉県生まれ)
出身校 東京大学大学院 工学系研究科建築学専攻 修了
主要職歴 2011年 株式会社日建設計 入社
主要作品 株式会社イシダ東京支社/西日本FH北九州ビル/ 文京シビックセンター大ホール・小ホール特定天井改修

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