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第36回

新人賞

金子 侑樹 / Toyota Technical Center Shimoyama 環境学習センター

建物名称 Toyota Technical Center Shimoyama 環境学習センター
所在地 愛知県豊田市下山田代町松ヶ田和2-2
主要用途 事務所
建築主 トヨタ自動車株式会社
設計監理 株式会社竹中工務店
施工 株式会社竹中工務店
建築面積 536㎡
延床面積 423㎡
階数 地上1階
最高高さ 6.0m
主要構造 木造

 

 愛知県豊田市下山地区は、人と自然の共生する里山環境を色濃く残した場所である。本作品は、里山での営みを体験し、その魅力を次の世代に伝えていくための学習施設である。
 建築地を含む建築主所有林の環境整備の副産物として生じた間伐材を、構造材から仕上材に至る様々な部分に利用している。かつて放置林だった山林の間伐材は痩せていて細く、搬出路網も十分に整備されていないため、短く切断して搬出される。その「細く、短い」間伐材を個性と捉え空間デザインに展開することを目指した。
 建物は、周囲の山並みと呼応する緩やかな切妻屋根を、視線や空気が通るように大きくズラしながら並べた3棟からなる。地域住民を集めて環境学習を行うための十分なスペースとして、3棟それぞれに約10mの無柱空間が求められた。
 細く短い材料を活かしながら、10mの無柱空間を実現するために、単体では斜材に力の入らない不完全なフレームを斜材配置をズラしながら並べ、そこに斜材を縫うように梯子状の梁材を挿入することで、不完全なフレーム同士が支え合う相持ち立体梁「ZIGZAG梁」を考案した。ZIGZAG梁には斜材のズレの他にも、登梁と梯子梁束材の配置のズレ、斜材を挟み込み形式にしたことによる斜材芯のズレ、梯子梁配置の平面的なズレ、といった複数のズレを仕込んでいる。これらのズレはディテール面の改善や鉛直荷重に対するたわみ差の解消といった効果を持つとともに、製材が浮遊したような空間を演出する。
 空間を支配する斜材には、細く短い材料を活用しながら、打音式グレーディングマシンでの品質検査に配慮して、75角の断面を採用している。登梁のピッチや梯子梁のせいなどは、75角の斜材断面を定数として、構造性能とともに架構のプロポーションにも配慮して決定している。
 ディテール面では、斜材同士および梯子梁を接続する金物が見えないように配慮した。稲妻型の金物を製作し、斜材に対しては上からプレートを当ててラグスクリューで止め付け、梯子梁弦材に対して下からプレートを当ててボルトと座付きナットで止付けとすることで、斜材自体に金物の存在を隠すようにしている。
 架構のシステムやディメンション・ディテールに、里山の営みから生まれた間伐材の個性を凝縮することで、地産地消の里山を表現する学習空間を実現した。

写真 撮影 ナカサアンドパートナーズ/金子 美由紀

金子侑樹

生年 1991年(静岡県生まれ)
出身校 名古屋大学大学院 環境学研究科都市環境学専攻 修了
主要略歴 2015年 株式会社竹中工務店 入社
主要作品 カゴメビル/モンブランホテルラフィネ名古屋駅前/ パッシブタウン第5街区

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