JSCA賞 受賞者JSCA AWARD WINNERS
第37回
奨励賞
伊藤 央 / 松本市立博物館
| 建物名称 | 松本市立博物館 |
|---|---|
| 所在地 | 長野県松本市大手3-2-21 |
| 主要用途 | 博物館 |
| 建築主 | 松本市 |
| 設計監理 | 久米・伊藤・乃村共同企業体 |
| 施工 | 戸田・ハシバ・松本土建特定建設工事共同企業体 |
| 建築面積 | 2,972.42㎡ |
| 延床面積 | 7,774.86㎡ |
| 階数 | 地上3階 |
| 最高高さ | 17.85m |
| 主要構造 | RC(PC)造、一部S造 |
松本市立博物館は創立100年以上の歴史を持ち、前博物館は1968年に国史跡松本城内に開館した。その後老朽化や狭隘化等の影響を受け、2023年に現在地へ移転新築し開館した。敷地はかつて松本城内であった「三の丸」地区にあり、まちづくりを公民連携で進めている地域で、城に繋がる景観形成と武家地であった土地の記憶に相応しい姿が求められたことから、この地区のかつて甍が連なっていた時代の記憶に応え、蓑甲を備えた切妻屋根で覆った伝統的な建築形とした。1階は街とのつながりを重視しガラスで覆われた開放的な空間とし、2階以上に納めた展示室と収蔵庫が生みだす長い外壁は、遠景ではかつて連なっていた白塀が想起でき、近景では松本の伝統民芸である松本てまりを想起する文様が立体的に浮かび上がる、表情のあるGRCの白壁とした。
博物館は重要文化財や国重要有形民俗文化財等約11万点を収蔵する。それら貴重な資料を収集保存するため、二重外殻構造の基本構造で収蔵品を守り、恒温恒湿を保つ最新の機械設備による環境保持性能を備える計画とした。
最高高さ18mの制限下で、切妻屋根、3層、天井高さ確保という条件を満たすためPC構造を採用した。主要な部屋は無天井(=構造を現し)として気積を最大化し、床下に設備を納めて吊るす設備を極少化し、落下に対する安全性を高めつつ空間の独自性につなげている。敷地に余裕がないことから、下部構造まで建て逃げ施工とするため全体をPCaPC架構とした。PCaPC部材の形状を工夫して設備配管スペースを確保し、逆梁形式での床下設備配管を実現し、最上階の鉄骨のスラスト力を片持ちPCaPC柱で処理した。
折板屋根は三角形の平面を立体的に組み合わせた形状で、エントランス上部の松本てまり色の強いパターンと、展示室に使われている照明を埋め込めるようにしたパターンの2つがある。折板構造はそのまま天井面を構成しており、エントランス上部や展示室の空間を構成している。架構は三角形の6mm鉄板の外周にFBや型鋼を配置した外枠構造とし、この枠同士を高力ボルトで接合することで一体的な屋根として機能している。折り目に溶接がないため鉄板のエッジによるシャープな印象を作ることができた。製作においてはファブ側の3Dモデルと施工者のBIMモデルで連携を行い、3次元的な収まりの確認が行われた。

伊藤 央
生年 1973年(神奈川県生まれ)
出身校 東京大学大学院 工学系研究科建築学専攻 修了
主要職歴 1998年 株式会社久米設計 入社
主要作品 大和ミュージアム/トンボ鉛筆本社/国立代々木競技場耐震改修/小石川植物園温室
