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第25回

奨励賞

山梨県立図書館「かいぶらり」

建築名称 山梨県立図書館
所在地 山梨県甲府市北口 2-8-1
建築主 山梨県
設計者 久米設計・三宅建築設計事務所共同企業体
施工者 清水建設・早野組・国際建設共同企業体(建築工事)
建物規模 敷地面積 9,062.01m2 建築面積 3,960.24m2 延床面積 10,851.84m2 階数 地上 4階 地下 1階 最高部高さ 19.591m
主要用途 図書館
主要構造 鉄骨鉄筋コンクリート造 (一部、鉄骨造、鉄筋コンクリート造)

この建築は、甲府北口駅広場に面して建つ、県立図書館であり、県民が気軽に接し、人と人が交流し合い、様々なメディアにより情報を伝えるだけでなく、甲府駅前の市街地活性化の役割もあわせ持っている。建築には、豊かな自然と共生しつづける山梨の特徴を表す「葡萄籠、葡萄棚、舞鶴公園の石垣、ワインと葡萄、緑、水晶」 をデザインとして取り入れている。

コンセプトのひとつである葡萄籠、葡萄棚を想起させる西・南側壁面の籠状格子を屋根面へも展開させて建物全体を包み込む建築計画に対して、構造計画は、南北方向に9m毎に必要となるハイサイドライト部分の高低差を利用してトラス大梁を構成し、37mの東西方向のスパンに架け渡した。そして、このトラス大梁の上、下弦材間を、上弦材となるH形鋼による面状の格子架構と、緩やかに弧を描く帯状の下弦材との組み合わせによる鉄骨トラス小梁で結びつけた。

特に帯状の下弦材には、細いロッド材やH形鋼などとはせず、一見してプレートに見えるFBの組合せ材を用いた。「構造としての既視感を消す」ことで、格子の視覚的イメージをより強調することを考えた。さらに、この構造材らしからぬ柔らかさを持った帯状部材は、束材やトラス大梁とのボルト接合、ガセットプレートの目隠しにもなるため、接合部の簡素化とコストダウンも可能としている。また、ハイサイドからの光の反射と拡散、スプリンクラー配管等の目隠し、空調ダクトの視覚的な制御に寄与しており、構造材としてだけではなく意匠材、設備材となり、環境調整装置として有効に機能させている。

建築は、9mグリッドを基本とした 49×72mの長方形平面である。メイン空間となる2階の閲覧スペースは、トラス大屋根で覆われた2層分の階高の自由で開放的な空間となっているが、この架 構を成り立たせるために、東側1スパンを鉄骨鉄筋コンクリート造による耐震コア架構とし、トラス大屋根と連結させている。
この9m毎に勾配を持った大屋根は、9m単位の1つの屋根構面を取り出した場合には、常時において水平方向に分力が作用するが、連続して一体化することで安定した架構となっている。地震 時の水平力は、鉄骨トラス小梁の上弦材である格子架構により、東側の耐震コアに伝達される。
西・南側壁面を覆う緑のカーテンウォールとした籠状の格子架構は2250mmグリッドとし、ピン接合とした溝型鋼で構成している。格子架構は、鉛直荷重を本体からの頂部片持ち梁にて支持し、 格子の面外方向をピン接合、面内水平方向にはルーズとして水平力、熱伸び応力を伝達させないことで、繊細な架構としている。

奥野 親正

/ 生年月日 /
1968年10月16日(三重県生まれ)
/ 出身校 /
明治大学大学院 工学研究科建築学専攻 修了
/ 主要職歴 /
1993年 株式会社久米設計 構造設計部 入社
/ 主要作品 /
北九州市立いのちのたび博物館
波賀町庁舎
マリンパレスかごしま
明治大学アカデミーコモン
赤坂Bizタワー
大分運転免許センター

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