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第25回

新人賞

実践女子学園 創立120周年記念体育館

建物名称 実践女子学園 創立120周年記念体育館
所在地 東京都渋谷区東1丁目1番11号
建築主 学校法人 実践女子学園
設計者 大成建設株式会社 一級建築士事務所
施工者 大成建設株式会社 東京支店
建物規模 敷地面積 23,248.59m2 建築面積 2,578.17m2 延床面積 4,258.52m2 階数 地上3階 最高高さ 22.6m
主要用途 中学校・高等学校体育館
主要構造 RC造(一部S造)

本建物は渋谷駅から徒歩10分の場所にある中学校・高等学校の体育館である。キャンパス内の計画地は中高生の通学の際のメイン動線となるプロムナードに面しており、RC打放しの列柱廊を配置して学校の顔として相応しい厳格なファサードを目指した。施設構成は12.5m以上の天井高さを誇るメインアリーナをはじめ、柔剣道場や卓球、ダンス等の授業を行うサブアリーナ、多目的に利用が可能なギャラリーアリーナという3つの性格の異なるアリーナを持ち、更衣室や便所等の諸室をアリーナの間に挟む格好でコンパクトな動線となる施設計画である。
構造架構は、仕上げを極力なくしたシンプルな建物であるため、本体部分はRC造を用い、デザインに配慮した構造体とした。 また、メインアリーナ屋根はS造とし、約38m×33mの大空間を実現した。

本建物の最大の特徴は、楕円形状のリングケーブルを有するメインアリーナである。3階部分に位置するメインアリーナ空間は、公式バレーボールの規格である有効天井高12.5mを満足する室内空間を確保し、かつ、日影規制を満足させるために屋根断面形状を台形型にする必要があった。この架構形状ではスラストが生じるため、屋根部分にリング状の構造用ケーブル(リングケーブル)及び放射状のタイロッド(ステイロッド)を抵抗要素として配置し解決を図った。また、リングケーブルを正円にした場合、吊下式バスケットゴールと干渉し、有効天井高を確保できないため、リングケーブルを楕円にし、建築計画と構造計画を両立させた。加えて、このリングケーブルはスラストを処理するだけでなく、張力を導入することで、鉄骨梁の応力状態をコントロールし、架構全体が最適な応力状態になることを目指した。この導入張力を調整することで、鉄骨梁のたわみや外周鉄骨柱のスラストによる傾きなどの変形も屋根や外壁材の仕上げに影響がでない最適な状態とした。施工においては、施工手順を考慮した詳細な解析を行い、リングケーブルとステイロッドの交点及びステイロッドの厳密な長さ管理により、張力導入を行った。また、リングケーブルとステイロッドの交点が張力導入により移動するため、想定した完成形状にするためにも、長さ管理が非常に重要であった。
本建物を実現するにあたり、構造設計者として空間を成立させるための構造計画から、建物が完成に至る施工計画にまで携わることが、理想の建物を作るために重要であると改めて実感した。

髙澤 昌義

/ 生年月日 /
1981年8月19日(高知県生まれ)
/ 出身校 /
東京工業大学大学院 総合理工学研究科
環境理工学創造専攻 修了
/ 主要職歴 /
2006年 大成建設株式会社設計本部 入社
/ 主要作品 /
横浜カメリアホスピタル
株式会社ニコン熊谷製作所8号館
株式会社ヨックモッククレア日光工場
沢井製薬株式会社関東工場
株式会社木の屋石巻水産美里町工場

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