JSCA賞 受賞者JSCA AWARD WINNERS

東京タワーは昭和33年に完成した高さ333mの自立鉄塔であり、関東圏を網羅する電波塔かつ東京のシンボルとして親しまれてきた。
2003年開始の地上波デジタルTV放送用施設(アンテナ及び機械室増設)の受入を契機に、超高層建築物同等の耐震性能を実現すべく、延べ約15年に渡る2回の大規模な耐震補強の設計と工事監理を遂行した。

タワー頂部SG塔の、設計時には想定されていなかった鞭振現象による耐力不足が補強設計上の最難題となったが、第1期改修ではアナログTV放送が継続中であり、SG塔自体の補強が不可能であった。この解決方法として、SG塔脚部を塔体と緊結している水平固定材を制振ダンパーに置換することで、SG塔の鞭振り現象を抑制するとともに、SG塔と塔体間の水平変位差を利用して地震時エネルギー吸収を図る、制振改修を立案した。これにより、SG塔の地震時応答の大幅な低減が可能となった。

2011年東北地方太平洋沖地震では制振効果を発揮し、SG塔を弾性に保てたが、タワー最頂部のSTアンテナ柱に塑性変形が生じた。ST柱はアナログTV放送中の第1期改修には補強できなかった部位である。
同年7月のアナログTV放送終了を受けて実施した第2期改修では、被災したST柱の高強度鋼材BOX柱への交換、SG塔への外郭補強用トラス架構の新設、SG塔脚部の制振ダンパーの更新・追加等を実施することで、耐震性能の更なる向上を実現した。
また、常時・強風時はSG塔脚部を固定し、地震時には油圧回路を利用して固定を解除・ダンパーを作動させる新たなロック機構の開発に成功した。

<本業績に於ける各受賞者の役割>

【木原碩美】 第1期改修のプロジェクトチーフとして、タワーの耐震補強と言う特殊な補強計画の方向付けを行うとともに、第2期改修では、基本設計段階までアドバイザーとして関与した。第1期改修におけるSG塔脚部の制振改修、第2期改修でのSG塔の外郭補強等、主要な補強内容が当人の発案に端を発している点は特筆に値する。

【山野祐司】 第2期改修のプロジェクトチーフとして、補強計画の方向付けを行った。特にロック機構の選定にあたっては、豊富な経験をもとに設計方針を明確にするとともに、様々なアイディアを提供した。東北地方太平洋沖地震の際には、被災したST柱の残留変形部分の処置について采配を行った。

【國津博昭】 第一期改修では中心的な役割を担い、設計監理をまとめ上げた。その後も対応窓口として施主と堅い信頼関係を築き、東北地方太平洋沖地震では施主・施工者と連携して応急措置を立案するなどの対応を行った。第二期改修は、初期段階の計画を主導し、プロジェクトの流れを作った。

【樫本信隆】 第一期改修では、解析全般を中心に担当した。その後も継続してタワーの維持管理に参加、東北地方太平洋沖地震でのST柱塑性化現象の解明に努めた。第二期改修では中心メンバーとして、補強設計と 工事監理を遂行した。