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第27回

新人賞

オガールベース

建物名称 オガールベース
所在地 岩手県紫波郡紫波町紫波中央駅前 2-3-12
建築主 オガールベース株式会社
設計者 らいおん建築事務所 + 木村設計A・T
施工会社 橘建設
建物規模 地上2階
建築面積 2,800 m²
延床面積 4,300 m²
主要用途 ホテル、商業施設、体育館
主要構造 木造、一部鉄筋コンクリート造

本建物はバレーボール専用体育館とホテル、商業施設を整備して合宿・研修ビジネスを展開し、町の滞在交流人口の拡大を図るユニークなまちづくり事業の一環である。本建物はこの事業の中心施設のひとつとして計画された。建物は中央の体育館棟と両脇のホテル・商業棟2棟の計3棟からなる。地場産材の利用を念頭に構造はいずれも木造を主体とし、町内の施工業者により施工可能とするため、様々な構造的課題をローコスト、ローテクニックで解決することが求められた。

ホテル・商業棟の2棟はいずれも1階がホテルラウンジ・商業施設で開放的、2階は部屋割りが細かいホテル客室であり上下階の間仕切壁位置がまったく異なるうえ、将来の改修等を可能とするため、耐震要素は空間に対して最小限であることが要求された。そこでこれらの条件に対応した耐震要素として、RC柱と集成材柱を交互に配置した「櫛型耐震壁」を考案した。この櫛型耐震壁は1階では床から片持ち支持となるRC壁柱が地震力を負担し、2階はRC壁柱で脚部を固定された集成材柱が地震力を負担する。施工的には通常の木架構と同様に建て方を行ったのち、集成材柱を頼りに配筋、型枠を立て込んでコンクリートを打設するのみで簡易な施工が可能である。そのうえ、木造の在来軸組工法ではいわゆる壁倍率で7倍程度が最大強度であるところを、本耐震壁では壁倍率換算で1階で35倍程度、2階で15倍程度の強度を確保することができ、ローコスト・ローテクニックでありながら壁量を在来軸組工法の1/5~1/2程度と大幅に少なくすることで前述の課題の解決を可能とした。

体育館棟は壁にバレーボールの壁打ちができるようにRC壁を2m立ち上げた上に切り妻型の木造架構を乗せている。木造架構は切り妻屋根に方杖と頂部のつなぎ材を配置したシンプルでありながら、アーチ効果を最大限に発揮した効率的な架構とした。また、工期短縮、施工の省力化を図るため、設計時より内部の総足場をなくし、スパン端部のみの足場として建て方ができるように設計を行った。

また、架構全般的に木材料はすべて町産材、もしくは県産材を使用し、集成材・製材にはできる限り住宅流通サイズの使用、既成の木造住宅用金物の活用等を行った。以上のような構造的工夫を行い、地場産材・地元施工で実現した「この町によるこの町のための建物」が出来上がった。

木下 洋介

/ 生年月日 /
1978年1月11日(神奈川県生まれ)
/ 出身校 /
東京工業大学大学院
総合理工学研究科環境理工学創造専攻 修了
/ 主要職歴 /
2003年 金箱構造設計事務所 入社
2011年 木下洋介構造設計室 設立
/ 主要作品 /
ちぐさこども園 / 杉の子保育園 / 家の家

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