JSCA賞 受賞者JSCA AWARD WINNERS

About JSCA AWARD

第29回

作品賞

大塚グループ大阪本社 大阪ビル

建物名称 大塚グループ大阪本社大阪ビル
所在地 大阪府大阪市中央区大手通 3-2-1
主要用途 事務所・保育所
建築主 大塚製薬株式会社
設計・監理 株式会社日建設計
施工 株式会社竹中工務店
建築面積 861.10m²
延床面積 7254.71m²
階数 地上11階、地下1階
最高高さ 49.82m
主要構造 S造、一部SRC造

本建物は、大阪市中央区に位置する大塚グループの大阪本社ビルである。「創造性」や「発想の転換」を大切にする大塚グループの企業理念をふまえ、「大塚らしさ」を魅力ある建築として表現することが、設計チームに与えられた大きな課題であった。これに対し、三角形に組んだ繊細な鉄骨架構(ダイアゴナルフレーム)と外装が一体となった特徴的なファサードで建物を包み込む計画を提案し、オフィスとしては奥行が浅い敷地条件の中で、自然採光と隣接ビルへの視線制御の両立を図りながら、柱型の出ない事務室を目指した。構造と外装の一体化を図ることで、その総厚は375mmにおさめられており、約50mのオフィスビルの「構造+外装」としては極めて薄い、「スキンストラクチャー」とも呼べるファサードを実現した。

特徴的なファサードを単なる装飾ではなく、構造体と一体化させることでオリジナリティのある建築を創ることが構造計画のテーマであった。全体の構造計画は制振構造とし、地震エネルギーを吸収する部材を別に配置することで、大地震時にもダイアゴナルフレームの損傷を制御する計画とした。この時、斜材の角度と強度の違いを利用し、制振部材をダイアゴナルフレームに先行して降伏させている。

ダイアゴナルフレームは、溶接施工性から柱・梁ともにH形鋼とし、BH-250×150の断面を基本とした。柱フランジの力が面として流れるように、梁は弱軸使いとして仕口部を一枚の板取りとし、6枚のウェブが集まる接合部中心にはフラットバーを入れるなど、スムーズな力の流れと溶接施工性を考慮したディテールとした。また、魅せる鉄骨であるため、仕口部の製作・溶接方法は、設計段階で意匠設計者と裏当て金やエンドタブについても綿密な打合せを行った。現場段階では、鉄骨製作工場とも十分に意図疎通を図り、設計者の想いを伝えるべく現場に何度も足を運び、作り込みを行った。また、一般部以外の稜線部や隅角部などの特殊な接合部にも工夫をもり込み、1階のエントランスでは、構造材をよりエレガントに魅せるため、柱形状をY字形とした。

大塚グループ大阪本社大阪ビルは、何か画期的に新しい構造やシステムを取り入れた訳ではないが、それぞれの課題に対し、より深くこだわり・関わり、様々な方々と協働することで、携わった人々の「想い」と「ものづくりの苦労や楽しさ」が具現化された建築に結実したと考えている。

山田 祥平

/ 生年月日 /
1982年9月28日(静岡県生まれ)
/ 出身校 /
京都大学大学院
工学研究科建築学専攻 修了
/ 主要職歴 /
2007年 株式会社日建設計 入社
/ 主要作品 /
京都府医師会館 / 赤坂センタービル / 北播磨総合医療センター / 修道大学3号館 / 龍谷大学東黌

一覧へ戻る