JSCA賞 受賞者JSCA AWARD WINNERS
第30回
新人賞
ヴォーリズ記念アリーナ
建物名称 | ヴォーリズ記念アリーナ |
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所在地 | 滋賀県近江八幡市市井町 177 番 |
主要用途 | 学校 ( 中学校・高等学校 ) |
建築主 | 学校法人 ヴォーリズ学園 |
建築設計 | 株式会社 一粒社ヴォーリズ建築事務所 |
構造設計 | 株式会社 竹中工務店 |
設計・監理 | 株式会社 一粒社ヴォーリズ建築事務所 株式会社 竹中工務店(木造関連) |
施工 | 株式会社 竹中工務店 |
建築面積 | 1,965 m² |
延床面積 | 2,303 m² |
階数 | 地上2階 |
最高高さ | 12.7m |
主要構造 | RC 造 一部木造 ( 屋根架構 ) |
本建物は滋賀県近江八幡市にある学校法人ヴォーリズ学園のアリーナである。隣接するヴォーリズ記念体育館の竣工(1972年)から45年の中で生徒数が増え、全校集会のできるアリーナの建設が長年の課題であり、学園創立100周年に向けた長期計画の一環としてアリーナが計画された。建築主から「学園を代表する建物にして欲しい」という依頼があり、シンボリックなアリーナの実現を目指した。
設計上の課題に「デザイン性」だけでなく、予算内に納まる「コスト」、入学式から使用できる「工期」をテーマとしてあげた。特に大断面集成材を採用すると「コスト」「工期」が厳しくなるため、如何に「製作性」「施工性」を満足する計画にできるかを考えた。
屋根架構として39.1m×32.6mのスパンを有する3層構成した木造複層格子梁を考案した。この架構は上下弦材を短辺方向に配置し、斜材はその間に通す構成とした。屋根面をヴォールト形状とし、集成材梁をアーチ機構とすることで圧縮力による応力伝達を実現した。偏載荷重等により発生する曲げ応力に対しては、上下弦材が斜材をサンドイッチすることにより、フィーレンディール架構が成立することを考えた。また上下弦材を斜材との交差部に継ぎ手不要の通し材とすることにより部材数を削減し建方工期の短縮を実現、かつ木造特有の半剛接合部を削減することができた。斜材は上下弦材を繋げる役割と屋根の面内補剛の効果、屋根の立体効果に寄与しており、本建物特有の屋根架構を構成することができた。
また、フィーレンディール架構を成立させるためには、斜材だけでは上下弦材を繋ぐウェブ材が不足する。上下弦材を一体的に挙動させる必要があり、伝統木造の技術である貫架構が適用できないかと考えた。この架構により集成材梁の小断面化が可能となり、梁材は220mm×450mm、オウシュウアカマツの対称異等級構成集成材(E105-F300)に統一した。この梁幅は大断面集成材の二次接着が不要となる最大サイズで納めており、製作工期の短縮、コスト低減も実現した。貫には回転剛性を期待しているが、繰り返し荷重によりめり込み変形し、回転剛性が低下する。そこで一部には「抜け出し拘束楔」を配置した。この楔は繰り返し荷重による回転剛性が低下しない技術である。
本建物は 2017年3月末に竣工した。4月6日には春休み中にも関わらず中高生が一堂に会し、竣工を祝っていただけた。 この3層構成した木造複層格子梁により暖かみのあるシンボリックなアリーナを実現できたと考えている。
山田 達也
/ 生年月日 /
1986年3月14日(東京都生まれ)
/ 出身校 /
日本大学大学院理工学研究科建築学専攻 修了
/ 主要職歴 /
2010年 株式会社竹中工務店 入社
/ 主要作品 /
ANH伊丹新格納庫 / 立命館大学大阪いばらきキャンパス学舎棟 / 数研出版新関西本社ビル / アサヒファシリティズ蛍池寮 楓 / 大阪市北区大淀南2丁目OM計画